距離空間の完備化(3)
「C(X)/~ の距離をどう定義するか」の証明
C(X)とは、距離空間Xの基本列全体の集合のことです。
この記事は、前回:
の「C(X)/~ の距離の定義」が正当であることの証明です。
そのために、
(1) C(X)の2つの元(基本列)、(xn)(yn)に対して n→∞:(ρ(xn,yn)|n∈N)が収束すること
(2) 関数d~ が代表元に依存しない C(X)/~ 上の関数であること。
(3) 関数d~ が距離の条件を満たしてること。
を証明します。 内田伏一「集合と位相」を参考
関数d~ は、
C(X)/~ をX~とし、関数d~ :X~×X~→R を、C(X)/~の2つの代表元に対し、
d~([(xn|n∈N)], [(yn|n∈N)])=d((xn|n∈N),(yn|n∈N))
として定義されます。
関数d は、
関数d:C(X)×C(X)→R を、
d((xn|n∈N),(yn|n∈N))=Lim[n→∞]ρ(xn,yn)
として定義されます。
d*の存在が言えるための条件が、(1)の証明です。
1.「(xn),(yn)∈C(X)に対してn→∞:(ρ(xn,yn)|n∈N)が収束すること」のεδ法による証明
まず、m、n∈Nに対して、 |ρ(xm,ym)-ρ(xn,yn)|≦ρ(xm,xn)+ρ(ym,yn) が成り立つことを言います。
これは、距離ρの定義の三角不等式から、ρ(xm,ym)≦ρ(xm,xn)+ρ(xn,yn)+ρ(yn,ym)
ρ(xm,ym)-ρ(xn,yn)≦ρ(xm,xn)+ρ(yn,ym)
mとnを入れ替えた式から、ρ(xn,yn)-ρ(xm,ym)≦ρ(xn,xm)+ρ(ym,yn)
で、距離ρの定義の対称律から、ρ(xn,yn)-ρ(xm,ym)≦ρ(xm,xn)+ρ(yn,ym)
したがって、|ρ(xm,ym)-ρ(xn,yn)|≦ρ(xm,xn)+ρ(ym,yn) 式1)
が成り立つ。
いよいよεδ法による表現
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m≧M → |ρ(xm,xM)|<ε/2、|ρ(ym,yM)| <ε/2] にできる。
(これは、基本列の定義より、そう言える)
よって、式1)より、
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m≧M → |ρ(xm,ym)-ρ(xM,yM)| <ε]
が成り立つ.
∴ 実数列(ρ(xn,yn)|n∈N)が、実数の完備性から収束することがわかる。
(つまり、実数列(ρ(xn、yn))は基本列なのです。完備距離空間R 詳くは(R、ρ1)の基本列)
//
基本列の定義とは?って言われそうなので、、、
距離空間Xの点列(xm|m∈N)が、
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m≧M → |ρ(xm,xM)|<ε] にできる時、基本列とかコーシー列であると言う。
2.「d~([(xn|n∈N)], [(yn|n∈N)]) が代表元に依存しない C(X)/~ 上の関数であること」の証明
d~ の定義は、
d~([(xn|n∈N)], [(yn|n∈N)])=d((xn|n∈N),(yn|n∈N))
d((xn|n∈N),(yn|n∈N))=Lim[n→∞]ρ(xn,yn)
であり、1より、Lim[n→∞]ρ(xn,yn)が収束する。
(だからといって、即「関数である」とは言えない。代表元に依存すれば意味を成さない)
そこで、「d~ が代表元に依存しないこと」を証明する。
(xn|n∈N)~(x'n|n∈N)かつ(yn|n∈N)~(y'n|n∈N)とする。
d((xn|n∈N),(yn|n∈N))=Lim[n→∞]ρ(xn,yn)
また、
d((x’n|n∈N),(y’n|n∈N))=Lim[n→∞]ρ(x’n,y’n)
であり、右辺は、上記1により収束する。
仮に、Lim[n→∞]ρ(xn,yn) =Lim[n→∞]ρ(x’n,y’n) が言えれば、
d((xn|n∈N),(yn|n∈N))=d((x’n|n∈N),(y'n|n∈N)) である。
つまり、d~は、代表元[(xn|n∈N)], [(yn|n∈N)]に依らない。
と言える。
そのために、Lim[n→∞]ρ(xn,yn) =Lim[n→∞]ρ(x’n,y’n) 式2)
を証明する。
同値関係(xn|n∈N)~(x'n|n∈N)は、
C(X)上の2つの元(xn|n∈N)と(x'n|n∈N)に対して、d*((xn|n∈N),(x'n|n∈N))=Lim[n→∞]ρ(xn,x’n)=0
となる時、その時に限って(つまり逆も言えるとき)同値関係と定義される。
これのεδ法による表現:
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(xm,x’m)| <ε]
これから、
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(xm,x’m)| <ε/2]
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(ym,y’m)| <ε/2]
で、式1) |ρ(xm,ym)-ρ(xn,yn)|≦ρ(xm,xn)+ρ(ym,yn) と併わせて、
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(xm,ym)-ρ(x’m,y’m)| <ε]
これは、式2)のεδ法による表現:
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m≧M → |ρ(xm,ym)-ρ(x’m,y’m)| <ε]
に等しい
∴ d~ は、代表元[(xm|m∈N)], [(ym|m∈N)]に依存しない
したがって、d~ は、C(X)/~ 上の関数である。
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3.「関数d~ が距離の条件を満たしてること」の証明
関数d~ は、
C(X)/~ をX~とし、関数d~ :X~×X~→R を、C(X)/~の2つの代表元に対し、
d~([(xn|n∈N)], [(yn|n∈N)])=d((xn|n∈N),(yn|n∈N))
=Lim[n→∞]ρ(xn,yn)
として定義されます。
ただし、C(X)/~は、C(X)上の2つの元(xn|n∈N)と(x'n|n∈N)に対して、
d((xn|n∈N),(x'n|n∈N))=Lim[n→∞]ρ(xn,x’n)=0
となる時、その時に限って(つまり逆も言えるとき)同値関係と定義される商集合です。
したがって、この証明は、d~([(xn)], [(yn)])=Lim[n→∞]ρ(xn,yn)が距離の条件を満たしてること
に尽きます。
距離の条件とは、
X:空でない集合。d:XxX→R において、
(1) ∀x、y∈X に対して d(x、y)≧0
0は、x=yの時に限る(逆に0ならx=yが言える)
(2) ∀x、y∈X に対して d(x、y)=d(y、x)
(3) ∀x、y、z∈X に対して 三角不等式が成り立つ
で、Lim[n→∞]ρ(xn,yn)のεδ法による表現:
Lim[n→∞]ρ(xn,yn)は、ρ(xn,yn)が、上記1で極限の存在が言えるから =a と置ける。
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(xm,ym)-a| <ε]
(1)は、ρ(xm,ym)≧0より、a≧0
∴ d~([(xn)], [(yn)])≧0
=0の時は、∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(xm,ym)| <ε]
ρ(xm,ym)=0は、xm=ymに限る。これと同値関係の定義より、1はOK
(2)は、
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(xm,ym)-an| <ε]
ρ(xm,ym)=ρ(ym,xm)より、
∀m∈N ∀ε> 0 ∃M∈N [ m>M → |ρ(ym,xm)-an| <ε]
∴ d~([(xn)],[(yn)])=d~([(yn)], [(xn)]) ・・・2はOK
(3)は、
コーシーの不等式:ρ(xn,zn)≦ρ(xn,yn)+ρ(yn,zn) より、
d~([(xn)],[(zn)])=Lim[n→∞]ρ(xn,zn)≦Lim[n→∞]{ρ(xn,yn)+ρ(yn,zn)}
∴ d~([(xn)],[(zn)])≦d~([(xn)],[(yn)])+d~([(xn)],[(zn)]) ・・・3もOK
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これで、「d~が、C(X)/~ の距離関数になっている」ことが言えました。
あぁ~しんど、、、
距離空間の完備化は、あと、距離空間Xから完備距離空間C(X)/~への写像fが等長写像であるのと、
像f(X)は、C(X)/~において稠密であること
を言えば終わりと思います。