ベクトルで表せない物理状態(密度行列)
清水明「新版 量子論の基礎」では 混合状態 のことは
書かれていますが、これの密度行列を用いた説明は避けられています。
「新版 量子論の基礎」では、
純粋状態: 原理的に許される最大限のところまで
状態を指定し尽くした状態
混合状態: どんな物理量を測定しても、2つ以上の純粋状態を
混合したような確率分布が得られる状態
とあります。簡単に言えば、
純粋状態: ヒルベルト空間上のベクトルで表される
混合状態: 状態ベクトルでは表すことはできない
(空間を大きくとれば可能)
例えば、重ね合わせ状態のアンサンブルを射影測定すると
1つ1つは純粋状態ですが「順序なしの集合としては混合状態」です。
また、環境の作用で起きるデコヒーレンスにより、混合状態になります。
密度行列の詳細な説明は:
密度行列 - 墓所の虫
状態ψが2つ以上の異なる純粋状態|v1>、|v2>、、、
のベクトルの和で表されれば、重ね合わせ状態といいます。
簡単のために、v1 と v2 の2つからなる場合、ベクトルの直積:
(√a|v1>+√b|v2>)(√a<V1|+√b<v2|)
で表わすと、
a|v1><v1| + b|v2><v2| + √{ab} ( |v1><v2| + |v2><v1| )
になります(係数√{ab} の項が干渉項であり、v1とv2を同時に含む)
一般に、係数√{ab} を c, d とした
a|v1><v1| + b|v2><v2| + c|v1><v2| + d|v2><v1| 0 ≦ c, d ≦ √{ab}
(ただし、aが|v1>である確率、bが|v2>である確率、a+b=1)
のような状態ψを示す行列のことを 密度行列 といいます。