2.1 ポインター測定基底
この記事は、堀田昌寛「量子情報と時空の物理」第2章 量子測定 についてです。
(私が読んで理解したことを書いています。誤りがあれば私の責です)
対象系sと測定器dの合成系では、例えば、スピンの↑↓の測定であれば、
対象系sが↑で測定器dが↓、またはその逆、は測定器である以上、ありえず、
|ψds> =|↑s>|↑d>+|↓s>|↓d>
という「対象系の状態と測定器の状態が完全相関」する量子縺れ状態です。
これを実現するハミルトニアンを、フォンノイマンの測定相互作用ハミルトニアン
と呼び、測定器の表示がメータ位置x_d とすると
H(t)=g(t)A_s ∂x_d
とします(A_s は、測定する物理量、g(t) は結合定数)
A_s と x_dのヒルベルト空間は、別なので、これらは交換します。
もし、交換しないならば、x_d A_s-A_s x_d≠0 なので
H(t)は、ユニタリーになりません。
そして、(時間発展の計算はテキストを見て頂くとして)
測定相互が、ある時間T働いて、その後は働かないというのがミソです。
結果は、縺れ状態になり、gTが十分大きいとすると
測定器のメータの状態が対象系との縺れ状態になり、
A_sの固有値a_n と メータ位置x_dの固有値u_n は、完全相関します。
しかしこれは、x_dの状態を |u_n> と書けると仮定すると
<u_n2|u_n1>=0
ということにすぎず、
この縺れ状態(=純粋状態)を密度行列で表した時、
非対角項=0(干渉成分がない)ことを意味しません。
(非対角項=0にするのが、射影仮説の1つの役割です)
測定器のメータを、部分系として見ると、もつれ系の部分系は混合状態です
しかし、その密度行列は、合成系の密度行列を「対象系の状態で縮約したもの」
なので、対象系との相関(固有値の対応関係)がなくなっており、
測定としての意味は持ちえません。
測定のこの段階は、スピンの↑↓の測定であれば、
http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/MathSci469%282002%29.pdf
の縺れ状態(5)式に対応する密度行列(8)式 の関係であり、
対象系をs、測定器をdとすると
|↑s><↑s| + |↑d><↑d|
か、
|↓s><↓s| + |↓d><↓d|
かの、どちらかには、なっていません。
どちらかにするのは、射影仮説であり、「測定器の段階」のあとの話です。