墓所の虫

.    「新版 量子論の基礎」と「量子情報と時空の物理」をベースに書いていますが、間違いをよくやります。まず眉にツバをつけてw

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大学教育は危機に瀕しています! 


私は言葉の使い方が下手なので、おかしいと思う文章は式に合わせてお読み下さい。
尚、新理論や独自理論を唱えるつもりはありませんが、アイデアの提案はしています。


[堀田量子] 付録Gの「隠れた変数理論」の謎

堀田先生の「入門/現代の量子力学」では、
付録Gで、CHSH不等式は破らない(-2~+2の範囲)が
1粒子では、量子力学の帰結と同じになる「隠れた変数理論」
が提示されています。
これについて、「レゲット・ガーグ不等式」の評価が
できるかと考えると:
https://mond.how/ja/topics/tsthfhf8fzgx429
>測定をしても物理量の値は変わらないという前提
があり、
結果が現れる「スクリーン」は、S-G装置の「表示部」でしかなく
「銀原子が受けるノイズの効果は、確率分布と不可分」
というのが本質的です。
つまり、「測定結果は、測定直前でも確定しない」
=レゲット・ガーグ不等式が成り立たないです。

しかし、レゲット・ガーグ不等式は、隠れた変数理論を含む
局所実在論では成り立たつはずで、
これはおかしいです。ということは、どうも
「付録Gの隠れた変数理論」は、
非局所論のサブセットではないか? と思うのです。

CHSH不等式を検討している付録G p270の式G25~G28では、
確率分布だけの関係であり
「角度が揃う時、測定値が確率的でなく100%(反)相関する」
という より強い相関が入っていません。
量子力学では、この強い相関は
「相反する状態の和(局所の状態)が、測定器に入る」
ことで生じ、この状態の干渉項がCHSH不等式を破ります。

一方、付録Gの隠れた変数理論では、
銀原子が受けるノイズの作用は、
測定結果のz軸の上の像と下の像が空間的に離れていても
離れていないのと同じ分布になりますから、
ノイズの作用は非局所的な力です。
なので、「角度が揃う時、測定値が100%(反)相関する」
を満たすような作用があると仮定しても矛盾は生じないはずです。

したがって、「付録Gの隠れた変数理論」が、
「角度が揃う時、測定値が100%(反)相関する」は仮定しない
非局所論のサブセット
であれば、理論の整合性がとれることになります。

ベクトルで表せない物理状態(密度行列)

清水明「新版 量子論の基礎」では 混合状態 のことは
書かれていますが、これの密度行列を用いた説明は避けられています。
「新版 量子論の基礎」では、
    純粋状態: 原理的に許される最大限のところまで
          状態を指定し尽くした状態
    混合状態: どんな物理量を測定しても、2つ以上の純粋状態を
          混合したような確率分布が得られる状態
とあります。簡単に言えば、
純粋状態: ヒルベルト空間上のベクトルで表される
混合状態: 状態ベクトルでは表すことはできない
      (空間を大きくとれば可能)
例えば、重ね合わせ状態のアンサンブルを射影測定すると
1つ1つは純粋状態ですが「順序なしの集合としては混合状態」です。
また、環境の作用で起きるデコヒーレンスにより、混合状態になります。

密度行列の詳細な説明は:
密度行列 - 墓所の虫 

状態ψが2つ以上の異なる純粋状態|v1>、|v2>、、、
のベクトルの和で表されれば、重ね合わせ状態といいます。

簡単のために、v1 と v2 の2つからなる場合、ベクトルの直積:
(√a|v1>+√b|v2>)(√a<V1|+√b<v2|) 
で表わすと、
a|v1><v1| + b|v2><v2| + √{ab} ( |v1><v2| + |v2><v1| ) 
になります(係数√{ab} の項が干渉項であり、v1とv2を同時に含む)

一般に、係数√{ab} を c, d とした
a|v1><v1| + b|v2><v2| + c|v1><v2| + d|v2><v1|   0 ≦ c, d ≦ √{ab}
(ただし、aが|v1>である確率、bが|v2>である確率、a+b=1)
のような状態ψを示す行列のことを 密度行列 といいます。

Note9. ベクトルの射影(射影演算子)

内積が定義されたベクトル空間に、
あるベクトル |v> と |a>があって、
|v>から |a>に平行な成分を抜き出す操作を
|v>の |a>への射影といい、その演算子を射影演算子と呼びます。

平行な成分の値(複素数)は、内積<a|v> そのものです。
|a>に平行なベクトル を、|a>自身とすれば、
射影演算は、|a><a|v> となり、

|a>への射影演算子は |a><a|  です。

射影演算:|a><a|v> では、内積の値はスカラーですから
掛ける順序を逆にしてもかまいません。
したがって、内積の値をf(a) とすれば、

f(a) |a>= |a><a|v>

と書けます。

射影したものを全て足し合わせれば、元の |v>ですから

Σa f(a) |a>=Σa |a><a|v>= |v>

ということは、Σ_a |a><a|=1 であり、
これを、完全性関係 といいます。

デルタ整数の実数ベクトルによる表現(実数ベクトルの射影)

初めて読む方は、↓を見て下さい。

kafukanoochan.hatenablog.com

整数nに対応するデルタ整数は、δ(x-n) です。
これは、縦・横の実数ベクトルを用いて
δ(x-n) =<n | x>   x,n∈R
と書けます。
これは、実数ベクトル | x>における「nを取り出す作用素の部分空間」
への射影としても書けます。
δ(x-n) |n>=|n><n | x>
全ての射影した結果を足し合わせれば、もとのベクトル | x>ですから
| x> = Σn |n><n | x>= Σn δ(x-n) |n>
同様に、「実数pを取り出す作用素の部分空間」に射影したら、
| x> = Σp |p><p | x>= Σp δ(x-p) |p>
= ∫ δ(x-p) |p>dp
したがって、
δ(x-n) |n>=|n><n | x>=|n><n |(∫ |p><p | x>dp)
=∫ |n><n |p><k | p>dp
=∫ |n><n |p>δ(x-p)dp
∴ δ(x-n)=∫ δ(x-p)<n |p>dp

ここで、δ(x)をフーリエ変換で表したら
δ(x)=∫ exp(-ix p) dp なので
δ(x-n)=∫ δ(x-p)<n |p>dp=∫ exp{-i(x-n) p}dp
=∫ δ(x-p) exp{-i (p-n) }dp

波動関数が非局所的と言うのはおかしい(状態ベクトルの射影)

波動関数ψ(q)は、物理量Qの固有空間を { |q>}とすると、

ψ(q)|q> = |q><q|ψ>

で定義されます。
つまり、状態ベクトルをQの固有空間へ射影したものです。

そして、状態ベクトルは、シュレーディンガ方程式:
ih'd/dt |ψ>=H |ψ>
に従って、時間発展するとします(清水明「新版量子論の基礎」要請4)
物理量が位置xである時、その波動関数ψ(x, t)は、
ψ(x, t)|x> = |x><x|ψ>
となり、
x1とx2 が、空間的にどんなに離れていても
ψ(x1, t)|x1>とψ(x2, t)|x2>は、状態ベクトルの変化と同時に
それぞれ瞬間で定まります。
でもこれは、強い光によってできた遠く離れた壁の光点が
「超光速」で移動するのを、
「壁の光点は非局所的である」と言わないように

波動関数は非局所的である」と言うのはおかしいです。

相対論的量子力学で、波動関数から、d/dt を計算すると、
この値は、光速度を越えません。
これは、普通の量子力学と異なり、内積に計量テンソルが付き、
diag(-+++) だからです。

上記は、シュレーディンガ方程式による状態のユニタリ発展の場合
でしたが、測定による非ユニタリ発展=状態の収縮 の場合
も、同じことで
x1とx2 が、空間的にどんなに離れていても
ψ(x1, t)|x1>とψ(x2, t)|x2>は、状態ベクトルの変化と同時に
それぞれ瞬間で定まります。
これを、上記と同様「波動関数は非局所的」と言うのがおかしいように

「状態の収縮は非局所的」と言うのはおかしいです。

量子力学、場の理論、超弦理論の共通理論「局所1次元場の理論」

量子力学場の理論超弦理論
の違いを基本変数で見ると、、、

量子力学
  基本変数が「粒子」の位置や運動量とかの物理量演算子
  その正準共役演算子
  (場の理論との比較で「粒子」と言っています)

場の理論=多体問題の量子力学
  基本変数が x,y,z空間の「真空の励起である場」と
  それに共役な(x,y,z空間の)一般化運動量の「場」
  (共に演算子。x,y,z,t は場を指定するパラメータ)

超弦理論
  基本変数が、高次元空間の「曲線」
  (曲線なので局所的には1次元)
  基本変数は演算子ではなく、
  それに共役な一般化運動量も考えない(と思います)

そこで、上記の共通セットみたいなものを、量子力学をベースに
考えました。曲線=局所的には1次元の直線なので、これを
「局所1次元場の理論
と呼ぶことにします。

つまり、
粒子や場や弦を「短い曲線」の集合とし、 基準変数が x,y,z空間の「局所1次元の曲線」と
それに共役な(x,y,z空間の)一般化運動量の「場」
を考え、この2つに交換関係を設定します。
(共に演算子になります)

この後の理論展開は、とりあえず置いて、
「物理的対象物がない」と言われるでしょうから、
まずは、それを示します。

量子力学の基準変数は「粒子」の物理量です。
1個の粒子は、x,y,z,ct空間では、1本の曲線です。
波動関数がδ関数であるという意味の「粒子」のことではないです)
これは、「長ーい弦」ということになり、

ここでは、x,y,z空間の回転と、ctを含む空間(時空)でのローレンツ変換
を統合して「複素角回転」と呼びます。
観測者(複数)は任意な、複素角回転と x,y,z,ct空間での平行移動
した位置にいるとします。
(もちろん、相対論的因果律は破りません)

教科書の間違い「量子的粒子は、波でも粒子でもある」

波動関数ψ(q)は、状態ベクトルの射影|q><q|つまり
ψ(q)|q> =|q><q|ψ> 
で定義され、
「粒子が持つ状態の情報」を意味します。
これは、「粒子は区別する情報を持たない」と同レベルな話です。

|x> への射影の波動関数ψ(x)なら
空間内の1点を占めたり=デルタ関数
波=exp(ikx-iwt) になって干渉縞を作ったりしますし、
そもそも、
デルタ関数 δ(x) =∫exp{ik(x-x')} dx'=波の和
波 exp(ikx)=∫exp(ikx') δ(x'-X)dx'=デルタ関数の和
なので、
教科書では「量子的粒子は、波でも粒子でもある」
としています(しているものが多い)

しかし、これは「粒子が持つ状態の情報」の話で、
量子的粒子自体は、「粒子」です。

何故なら、理論の「基本変数」を考えると
 (清水明「新版量子論の基礎」p238 参照)
場の理論の「基本変数」は、3次元の場とその共役運動量。
量子力学の「基本変数」については、
運動量p=-ih'∂/∂x 
なので、xは一般化座標になっている。
一般に、正準運動量p=-ih'∂/∂q 
(一般化座標q=ih'∂/∂pでもある)
であり、基本変数は、一般化座標qと正準運動量pです。

場の理論の基本変数=場と比較すれば
量子的粒子は、基本変数が単なる一般化座標なので「粒子」
と言えます。

「粒子」自体と「粒子が持つ状態の情報」は別ということです。

尚、場の理論で「基本変数」を、3次元の場でなく
有限長さの「局所的に1次元の線」にしたら弦理論になるかどうかは
僕では手に負えません、、、

状態がAとBの重ね合せの時「Aである」か「Bである」かという2値論理は適用できない

もちろん、測定したら「Aである」か「Bである」かのどちらかになります
でも、その時は、重ね合せではありません。
この議論は、重ね合せになってる時=測定前の話です。
したがって、状態A,Bは、2次元ベクトル(α、β) で表されます。

この場合、確実に=100% 「Aである」を(1, 0)とすれば、
確実に「Bでない」は、β=0
また、確実に=100% 「Bである」を(0, 1)とすれば、
確実に「Aでない」は、α=0
ということになります。

一般の場合の(α、β) において (α、β≠0)
αが1に近ければ「ほぼAである」とは言えますが、
β≠0なので、確実に「Bでない」は成り立ちません。
逆に、αが0に近ければ「ほぼAでない」とは言えますが、
β≠1なので、確実に「Bである」は成り立ちません。

∴ 重ね合せの時「Aである」か「Bである」かという2値論理は適用できません。

前紀世の残務整理(まとめ)

私は、「学生の頃の量子力学への憧れ」いわば「青春の尻尾」を、
50になって追っかけていたのですが、ほぼ目処がたったので、
ここで「前世紀の残務整理」としてまとめます。

1.∞高さ壁の箱の中のψ(p)

   前世紀の教科書は、誤っています。
   pは、正の一定値と負の一定値 の状態の重ね合わせではありません。
   ψ(p)= 1/2 (δ(p-p_n) + δ(p+\p_n) ) は誤りで、正しくはψ(x)のフーリエ変換
   詳しくは:教科書の間違いー箱の中の粒子の運動量 - 墓所の虫

2.量子力学は非局所論というのは間違い

   入門書とかに、位置xが -∞~+∞に広がった波動関数が瞬時に収縮すること
   (一般に、xが広がった波動関数ψ(x)=<x|ψ>が瞬時に変化すること)
   を指して「量子力学は非局所論である」 とよく書いてあります。
   波動関数は ψ(x)|x>=|x><x|ψ>という射影操作で定義されます。
   射影ですから、光線が作る壁の光点と同様、情報を伝えません。
   任意の|x1>と|x2>の波動関数の値には、相関関係はありますが、
   因果関係は、ありません。

   そもそも、量子論は、局所実在論より広いですが非局所実在論ではないです
   詳しくは:俗説の間違いー量子力学は非局所論 - 墓所の虫

3.量子もつれ系で「相手が測定して状態が収縮しても自分の方はまだユニタリ発展」

   よくある説明:
   「量子もつれでは、関連付いている粒子のもう片方の状態が収縮した段階で
    (その瞬間に)、遠く離れた自分の方(部分系)の状態も収縮する」
   は、間違いです。
   ベルの不等式が破れるのは、干渉項が0でない故で、
   「もう片方の状態が収縮して、その干渉項が0になっても、
    自分の方から見た干渉項がまだ0でない」からです。
   波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe

   よくある説明のように、「自分の方(部分系)の状態も収縮する」
   のであれば、その干渉項は0になるので、破れなくなります。

   私の説明は、「相手が測定した同時刻に、系全体の状態が収縮」
   と一見矛盾するように見えますが、
   後者は「あとで測定結果を持ち寄った過去の中でのデータ」においては、
   全系の状態が収縮した時点は、相手が測定した時点=同時刻まで遡れる
   ということであり、矛盾しません。
   弱測定で、「未来の状態が過去の測定結果に影響する」というのも
   「あとで測定結果を持ち寄った過去の中での未来の状態」
   おいてであり、この「同時刻に収縮」と同じことです。

4.ボーム理論や多世界解釈を叩き潰したいが(検討中)

   3の帰結から、
   「相手が測定しても自分の方から見たらまだユニタリ発展(未確定)」
   と言えます。
   しかし、ボーム理論や多世界解釈が創られた当時は、そうではなく
   「相手が測定したら自分の方も即確定(状態が収縮)」と思われていました。
   ここから、ボーム理論や多世界解釈は誤りが、導けそうなのですが、、、

6.位置xのある範囲での物理量

   物理量Aがxと交換するなら、ある範囲での期待値は意味を持ちますが
   位置xと交換しなければ、系全体(-∞~+∞の範囲)でないと意味を持たず、
   ある範囲を指定して、そこの(付近の)エネルギーや運動量というのは、
   意味を持ちません。

   トンネル効果や段々のポテンシャルの場合、
   系全体のエネルギー値とポテンシャルエネルギーの比較はOKですが
   比較が、ある場所でのエネルギー値ではいけないです(付近でもダメ)

7.粒子の数が 10^23個もあると、古典系=実在 と見做せる証明

   |n>と|n+1>は直交しますが、10^23個もあるとn-1とn+1とが
   事実上同じになり、
   そのため全体系のψ(x1,x2,x3, , ,) が定数と見做せることがミソです。
   詳しくは、別途書きます。

8.状態がAとBの重ね合わせの時「値はAであるか、Bであるか」という
  2値論理は適用できない

  例えば、「粒子は測定前もどこかの位置(x,y,z)に居る」のか
  「どこにも居ない」のか
  という2値論理の命題は意味を持たない(どちらも否定できる)
  ことが証明できます。
   状態がAとBの重ね合せの時「Aである」か「Bである」かという2値論理は適用できない - 墓所の虫

放送大学の教科書「量子物理学」の気になる所

1.p33 下段
   (2.15)式  ΔxΔp_x>h'/2 の説明:
   「これ以上正確に同時測定できない」

   は誤り。同時測定なら ΔxΔp_x>h' である(新版量子論の基礎p86)
   (2.15)式は、同一状態のアンサンブルに対し、
   xでの測定、pでの測定を別々に行った場合である。

2.p56 上段
   「定常波の波長は λ= 4a / n となる」
   「運動量p=h/ λ を、、、に適用すると、、、」

   結果は正しいが、p=h/ λ=nh / 4a  ではない。
   この場合のψ(p) は連続関数(ランダウ・リフシッツ「量子力学」p118問題1の解)
   であり、飛び飛びの値は、とらない。

3.p76 上段
   「クォークの実在が広く受け入れられるようになった」

   この「実在」は「仮説ではなく実際の存在」という意味でしょう。
   放送大学で、この講義を受ける人は「量子力学」に興味のある方が
   多いと思います。そのような方は「素粒子や原子の非実在性」に興味
   があると思うので、ここの「実在」という言葉は、誤解をまねくのでは?

4.p117 下段
   「一方の粒子のスピンを測定した瞬間に、他方のスピンは、、確定する」

   誤解を招く記述です。
   測定のあと両者の結果を持ち寄った時、他方のスピンが確定した時刻は
   「一方が測定した瞬間」まで遡れるというだけで、
   他方の状態が収縮するのは「自身が測定した時」か
   「測定結果の情報が伝わった時」です。
   それまでは収縮しません(シュレーディンガ方程式に従って時間発展する)

5.p264 中段
   「系のエネルギーより大きなエネルギーの中間状態が許される」

   短時間ならエネルギー保存則が破れてもよいとか
   摂動項はエネルギー保存則が破れるから
   という意味なら、間違いです。
   前者については、ΔxΔpとは、意味が異なります。
    測定時間とエネルギーの測定誤差の間に不確定性関係はない。 - Quantum Universe
   後者については、全体系ではエネルギー保存則は成り立っています。
   摂動論と、"時間とエネルギーの不確定性関係"という名の幻。 - Quantum Universe

6.p321 中段
   「マクロなレベルではシュレーディンガの猫状態は存在しない」

   と言い切るのは、おかしいと思います。
   ここで引用している1986年の「Yurka - Stoler論文」は、
   「コヒーレンス状態でなければ、猫状態は存在しない」と言ってる
   だけで、マクロでは、t=0の瞬間から「コヒーレンス状態でない」
   とは、言ってないようです。
   すでに、ミクロとマクロの中間的な場合では、
   「猫状態」は存在することが、NTTの実験で確かめられています:
   https://www.brl.ntt.co.jp/J/2016/11/latest_topics_201611042223.html
   (この場合の電流は、検流計で測れる=マクロな量です)
   少なくとも、マクロであるウイルスでは「猫状態」は、
   あり得るでしょう。

その他
 (1) 波動関数のちゃんとした定義が書かれていない。
   q表示の波動関数は、状態ベクトルの「物理量qの固有空間」
   への射影、つまり
   |q><q|ψ> = f(q)|q> の f(q)がψ(q) であり、
   それがシュレーディンガ方程式に従って時間発展する。
   ということです。
   これが書いてないので、学生が
   波動関数を単に「シュレーディンガ方程式の解」だと
   思ったり、「場」だと思ったりしないか心配です。

 (2) EPR論文やベルの定理の破れ に言及はしてますが、
   「実在性」の説明がないので、
   素粒子や原子、分子の局所実在=「素朴な実在性」は
   否定されたということが、学生に伝わらないと思います。

 (3) 波動関数(状態)の収縮については、書いてありますが、
   「射影仮説」のことは、書かれていない。
   射影仮説は、量子力学の理論的要請(公理)の1つです。
   (清水明「新版量子論の基礎」参照)
   波動関数(状態)の収縮に触れているのに、射影仮説を
   書かないのは、おかしいと思います。