密度行列
純粋状態(|1>、|2>、、、|j>、、、)にある物理量Aを、
射影測定した結果 <j|A|j> を考えてみます。
アンサンブルの平均値<A> は、 それぞれの確率を w_j とすると、
これに、1=Σb |b><b| 1=Σc |c><c| を挿入すると、
順序を入れ替えて、
ここで、Σj w_j |j><j| は、アンサンブルの混合の状態を表している。
これを、ρとおくと、上記は、
ρAを1つの行列Xと見ると、これは対角和の計算:
Σb X_bb=Σb <b|X|b> になっている。
したがって、
一般に、このρ=Σj w_j |j><j| は系の状態を表しており、
密度行列という。
1.密度行列の定義
以下の3条件を満たす作用素ρを密度行列と呼ぶ
(1) ρ=ρ†
つまり、自己共役演算子であること
(2) ρは、半正定値作用素である
つまり、任意のベクトル|J>に対して
<J|ρ|J> ≧0 ということ
(3) Tr(ρ)=1
つまり、規格化されていること
自己共役演算子は、スペクトル展開定理が適用できるので
上記の条件を満たせば、
ρ=Σj w_j |j><j| Σj w_j=1
と書ける。
その場合、w_j はρの固有値であり確率です。
2.密度行列の性質
(1) 密度行列が純粋状態を表す時
(混合してない=対角項のどれかが1で他は0の場合)
|j><j|ψ> という固有ベクトルが存在し、
その時に限り、ρ=ρ2(2回しても結果は同じ)
そうでない時 (対角項のどれも<1)
ρ2=ΣjΣk w_jw_k |j><j|k><k| ≠ ρ
また、Tr(ρ2)<1
(2) 密度行列は、一般に ρ=Σ_j w_j |j><j|という形の
一意な分解を与えない。
例えば、
ということで、一意になりません。
つまり「実験結果は、特定の直交系だけで解釈できない」
ということです。
逆に、多くの直交系のデータを採れば、
系の状態を特定できます。
これが、量子状態トモグラフィーです。
(3) 混合状態「アンサンブルの1つ1つの状態が重ね合わせでなく
その確率がわかっている状態」の場合
(例えば、重ね合わせ状態を射影測定したアンサンブルの場合)
この場合、密度行列は、対角項だけになります。
そうでない場合は、非対角項に ≠0の成分が現れます。
(非対角項は、状態間の干渉を表します)