量子力学で相対論を考える (1)
まず、特殊相対論から、
s2 = (ct)2 - (x2+y2+z2)=一定
を、内積に計量テンソルgをつけて
s2 =gμn・μn n=0,1,2,3
これを量子化(νn=-ih' ∂/∂μn)して
∂2/∂(ct)2 - (∂2/∂x2+∂2/∂y2+∂2/∂z2)
=∂2/∂s2 と置く。
これと、クラインゴルドンの方程式とを見比べると
(E2/c2 - p2) ψ= (mc)2 ψ=(h'^2 ∂2/∂s2)ψ
E=ν0、p_n=νn と置き、*をエルミート内積とすると
gνnνn ψ= (mc)2 ψ=-(ih' ∂/∂s)(ih' ∂/∂s)ψ n=0,1,2,3
sに注目すると、
ψ(s) = a exp(-i mc s/h') + b exp(i mc s/h')
これは、sの波動関数を意味します。
b=0 なら | ψ(s) |=一定で、s空間に一様に広がっています。
この場合、sの正準共役量mc の状態は、
ψ(m) = δ(m - m0) であり、m0にピークを持つデルタ関数であり
いわゆる普通の粒子です。
光は、m=0です。
右辺第1項と第2項では、mの符号が逆。つまり
a=0 なら、
ψ(m) = δ(m+m0) であり、-m0にピークを持つデルタ関数
です。
反粒子は、m>0のはずですから、これは反粒子ではなく
騾馬粒子と言って変な性質を持ちます。
a=b なら、
ψ(s) = cos(mc s/h') ですから、s空間上の波(実数関数)です
a= -b でも、s空間上の波です。
これらは、sの確率が0になる時=消滅しますが、瞬間なので
「光」ではないです。
この場合、sの正準共役量mc の状態は、
ψ(m) = δ(m ± m0) であり、m0と -m0 に
ピークを持つデルタ関数です。
これは、粒子と騾馬粒子の重ね合わせであって、
sの大きさが変動しますから
私は、真空のゆらぎと思うのですが、確証はないです。
何なんでしょう(ダークマターだったら面白いのですが)
観測者の存在の必要性
「観測者の意識の必要性」を最初に見出したのはフォンノイマンで
観測者の観測にょって、フォンノイマン鎖が終結します。
ここでは、何故、観測者の存在が必要か説明します。
尚、EMANさんの記事: 量子雑談
観測の何が状態を確定させるのか|EMAN|note
も併せてお読み下さい。
>「観測者の意識が状態を確定させた」というような表現
>をすることがあるわけだが、
>なんら神秘的なことを言っているわけではない
のです。
まず、測定対象系をsとし、そのスピンの↑↓を射影測定するとします。
1.測定器ばかりのフォンノイマン鎖の場合
s→d1→d2→d3→d4→d5→d6、、、
d3から見れば、合成系は最大もつれ状態の場合
|↑s>|↑d1>|↑d2>+|↓s>|↓d1>|↓d2>
という量子もつれ状態です。
各部分系は、一般には干渉項が0でない混合状態になり、
測定器も混合状態になり、何を示すか分かりません。
これらの測定器が、いくつつながっていても、
決して、スピンが1つだけの「固有状態」にはなりません。
現実には、ただ1つだけの「固有状態」=純粋状態ですから
この状況は、現実と合いません。
2.測定器のフォンノイマン鎖の最後に観測者oが居る場合
s→d1→d2→d3→d4→o
oから見れば、合成系は最大もつれ状態の場合
|↑s>|↑d1>|↑d2>|↑d3>|↑d4>+|↓s>|↓d1>|↓d2>|↓d3>|↓d4>
という量子もつれ状態です。
各部分系は、一般には干渉項が0でない混合状態になります。
しかし、実験事実は、
oは、d4(部分系=混合状態)を見て、oの意識=脳の状態は
スピンが↑か↓どっちか1つの固有状態=純粋状態になります。
これだけでは、まだ十分ではないので
3.測定器のフォンノイマン鎖の最後が観測者oと脳の測定器dBである場合
s→d1→d2→d3→o→dB
oから見れば、合成系は最大もつれ状態の場合
|↑s>|↑d1>|↑d2>|↑d3>+|↓s>|↓d1>|↓d2>|↓d3>
dB から見れば、合成系は
|↑s>|↑d1>|↑d2>|↑d3>|↑o>+|↓s>|↓d1>|↓d2>|↓d3>|↓o>
という量子もつれ状態です。
測定が終わった時、2に書いたように、
oの脳の状態は、↑か↓どっちか1つの固有状態=純粋状態
になります。
(もし、oが観測者でなく測定器であれば1の状況です)
測定器dBが、oの脳の状態を、何らか必ず示すとすると、
oの脳は、どっちか1つの固有状態=純粋状態であり
純粋状態は、確定した直後では、誰が測定しても、何回しても
同じ結果なので、dBが示す=dBの状態は、
↑か↓どっちか1つの固有状態です(誰も見なくても)
もし、oが観測者でなくただの測定器とすると、
dBは混合状態です。
したがって、観測者の存在は、必須です。
//
射影仮説の定義
測定直前に|ψ>なる状態ベクトルを持っていた系に、
物理量Aの理想測定(=射影測定)Pを行い、
測定値がAの固有値の1つaであったとする。
その場合、測定直後の状態ベクトル|ψ’>は、
P(a)|ψ>が規格化されていたなら、次式で与えられる。
|ψ’>=P(a)|ψ>=|a><a|ψ>
//
射影仮説の役割
(http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/handai2009.pdf より)
射影仮説には2つの役割があります。
(A)異なる測定値に対応する量子状態の間の干渉
をなくす。(デコヒーレンス)
(B)干渉のなくなった複数の量子状態の中から
どれかひとつを選び出す。
(A)は、状態を表す密度行列の非対角項を0にすることです。
(B)は、密度行列Σ_n a_n|An><An| をどれか1つにすることです。
//
量子力学に測定が必須であることの証明???
アリスの測定結果を「測定しない場合」も含めて
a|結果アリス>+b|未測定アリス>
と書いた時、a=0、 b=1なら
測定系の状態自体が消滅することを証明します。
これは、量子力学に測定が必須であることを意味します。
(消滅するというのは冗談です。はい)
|未測定_アリス>は、
未測定とは、まだ「何も測定しない」ことですから
測定結果の状態はない=0ベクトル
です。
何故なら、何らかの物理量を射影測定するとして
射影演算子に対し「何も測定しない」演算子=0行列
を加えたものとすると、
「何も測定しない」演算子の結果は、0ベクトル
だからです。
それで、量子もつれ対A,Bのスピンの測定の場合なら、
|ψ>=( a|↑アリス>+b|未測定アリス>) |↑A>|↓B>
+( a'|↑アリス>+b'|未測定アリス>)|↓A>|↑B>
となります。
未測定の時の全体系は、
|ψ未測定>=|未測定アリス> |↑A>|↓B>+ |未測定アリス>|↓A>|↑B>
となりますから、
|未測定アリス>=0ベクトルであるなら、
|ψ_未測定>=0
∴ 未測定なら全体系は、消滅する!
従って、量子力学に測定が必須である
//
種あかし
x未測定なら全体系は、消滅する
○未測定なら全体系の状態は、得られない
いずれにせよ、量子力学に測定が必須は本当。
何故、アリスの測定結果にボブの結果が一致するのか
量子もつれ対を測定する場合と、1つの対象系を複数の観測者
が測定する場合で、アリスが最初に測定した時、
「アリスの測定結果にボブの結果が100%相関する」
ことを証明します。
尚、「値がすでに1つに決まっている」からではないです。
1.もつれ対A,Bを測定する場合
図を描くのが面倒なので、堀田先生のブログの図を援用します。
波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe
の図3のイラストの式:
(ボブにとっては、合成系にアリスが含まれる)
において、
ボブも後から測定したとします。すると合成系にボブも含まれ
となります。
この密度行列を、アリスとボブだけ残して、縮約すると
です。
この密度行列で考えると、アリスが測定して↑だったとすると
だけとなり、ボブは、↓の状態だけになっています。
また、アリスが測定して↓だったとすると
だけとなり、ボブは、↑の状態だけになっています。
つまり、100%逆相関しています。
この理由は、粒子A,Bが、はなから100%逆相関だったからと
|↑アリス>と|↓アリス>や、|↑ボブ>と|↓ボブ>が直交する
からです。
//
2.1つの対象系を複数の観測者が測定する場合
1つの光円錐内だったら、あまり意味がないので
アリスは地球、ボブは月、チャーリィは小惑星にいて、
その中間に測定対象系s(電子のスピン)と測定器dがあるとし
その状態を、
|↑s>|↑d>+ |↓s>|↓d>
とします。
アリスが測定すると、
|ψアリス> = |↑s>|↑d>|↑アリス>+ |↓s>|↓d>|↓アリス>
ボブが測定すると、
|ψボブ> = |↑s>|↑d>|↑ボブ>+ |↓s>|↓d>|↓ボブ>
チャーリィが測定すると、
|ψ_チャーリィ> = |↑s>|↑d>|↑チャーリィ>+ |↓s>|↓d>|↓チャーリィ>
観測者全員を含んだ全体系の状態|ψ>は
個々の系のテンソル積=|ψチャーリィ>|ψボブ>|ψアリス>
なので、これに、|↑XXX>と|↓XXX>は直交を考慮すると、
1つの項に|↑アリス>|↓アリス>や|↑ボブ>|↓ボブ>とかが
現れることはないので
|ψアリス> = |↑s>|↑d>|↑アリス>|↑ボブ>|↑チャーリィ>
+ |↓s>|↓d>|↓アリス>|↓ボブ>|↓チャーリィ>
この式を見ると
アリスが↑なら、ボブもチャーリィも↑
アリスが↓なら、ボブもチャーリィも↓
という組み合わせしかないです。
したがって、全員が100%相関しています。
理由は、|↑アリス>と|↓アリス>や、|↑ボブ>と|↓ボブ>とかが
直交するからです。
注意しないといけないのは、
測定対象が測定器との相互作用している時点でも、
ボブもチャーリィも、光円錐の外ならアリスも
彼らから見た系の状態は、ユニタリな時間発展をしている
ということです。
つまり、月にいるボブにとって、測定対象の状態が収縮して
1つの固有状態になるのは、最低でも 1.3秒後で、
小惑星にいるチャーリィは、もっとあとなのです。
状態(波動関数)も、その収縮も客観的存在ではないです。
また、状態(波動関数)の収縮は、いつ起きたが言えないので
物理過程ではないのです。
//
もつれ対で、 誰かが一方を測定した直後、もう一方を測定する人の状態
量子もつれ対A,Bにおいて、誰かが一方の電子Aを測定したら、
もう一方の「測定前の人にとってのBの状態」
に対しても「値がすでに1つに決まってしまう」
とか「値は確定するが分からないだけ」
などと、専門家でもそう考える方は多いと思います。
仮に、アリスが地球にいて、ボブが月での場合で
アリスが測定した結果の情報や
「測ったけど結果は教えないよん」という情報
がボブに届く前の時点での「ボブにとっての状態」
を問題にしています。
尚、量子力学は、一般確率論の「無信号条件」が成り立つ
(堀田昌寛「入門/ 現代の量子力学」p225 参照)
なので
ボブの光円錐の外で何をしようが、ボブにつたわらない
というのが、この記事のミソです。
(光円錐の内側であれば、ボブが知らなくても状態は変化)
それなら「何故、アリスの測定結果にボブの結果が一致するのか」
という答えは:
何故、アリスの測定結果にボブの結果が一致するのか - 墓所の虫
簡単に言うと、もつれ対A,Bのスピンが、はなから 100%相関してるからと
|↑アリス>と|↓アリス>や、|↑ボブ>と|↓ボブ>が直交するからです。
決して「値がすでに1つに決まっている」からではない!
実験状況
波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe
の図3の時点の「イラストの式」の状況を考察します。
この状況は「アリスが測定していて、ボブはその結果を知らない」
です。(アリスが測定した事実だけは、ボブは知っている)
全体系の合成状態
図3のイラストの式は、
ボブにとっては、合成系にアリスが含まれることになるので
合成状態は、
になります。
ボブも測定するか、アリスから測定結果を得るまで、
この状態がユニタリな時間発展します。
ボブの方の電子Bだけの部分系
ボブの光円錐の外でアリスが電子Aを測定した直後の
ボブにとっての電子Bだけの部分系は、
上記の密度行列を、縮約したもので:
で、
これは、単に「どちらになるか分からない」であり、
「値がすでに1つに決まってしまう」
とか「値は確定するが分からないだけ」
という表現は、おかしいです。
アリスが電子Aを測定する直前との比較
直前の場合、全体系の合成状態は
1/ √2 |未測定{Alice}>|↑A>|↓B>+1/ √2 |未測定{Alice}>|↓A>|↑B>
「未測定」の効果は、どこにも影響を及ぼしませんから
この密度行列は
です。
この時のボブにとっての電子Bだけの部分系は、縮約して:
であり、上記の測定後と全く同じです。
したがって、
アリスの測定により「値がすでに1つに決まってしまう」
とか「値は確定するが分からないだけ」
という因果的な表現は、間違いです。
波動関数は観測者毎に異なることの証明(背理法)
波動関数は測定対象系に付属しているのではない(観測者毎に異なる) - 墓所の虫
で、
堀田先生のブログを引用したり、フォンノイマン鎖を使って
波動関数(状態)や、その収縮には、
観測者毎に異なる場合があることを説明したのですが、
これは、証明ではないので、ここで背理法を用いて証明します。
もちろん、観測者がたくさんいても、1つの測定器を
皆が見ているのであれば、波動関数は同じになりますから、
そういう意味では客観的な存在です。
尚、この証明には、清水明「新版 量子論の基礎」の
第8章 ベルの不等式
を引用しますが、ベルの不等式自体の説明はしませんので
証明を理解するには、この章をよく読んでおく必要があります。
実験の設定
p210 上段参照
ここの例8.2を使用します。
月へ来た粒子をA、地球へ来た粒子をBとする
月の観測者をアリス、地球の観測者をボブとする
アリスが先に測定し、ボブがその0.1秒後測定する(光円錐の外とする)
アリスの測定
アリスが先に粒子Aを測定し、仮にAの状態が+となったとすると
波動関数がどの観測者でも同じ場合(背理法)
式8.47は、(粒子Aが-の確率は0だから)
に収縮する。
仮にAの状態が-となったとすると
に収縮する。
このどちらかしかない。
ボブの測定
アリスより測定があとなので
波動関数がどの観測者でも同じなら
式8.47が収縮した上式が、ボブの所に来る。
CHSH不等式がどうなるか
アスペの実験等では、CHSH不等式の値の範囲が
-2√2 ~+2√2 になることが確認された
これを、CHSH不等式の破れと言う。
CHSH不等式を破るのは、 |+,- >と |-, + >の干渉効果である(p229)
ここでも、同様の実験を行いCHSH不等式の値の範囲を調べる。
もし、ボブの所に来た状態が
なら、
CHSH不等式の値の範囲が、-2√2 ~+2√2 になる(p229)
しかし、波動関数がどの観測者でも同じなら
ボブの所に来る状態は:
か
かの、このどちらかしかないので、
ボブの所で |+,- >と |-, + >の干渉効果は存在しない。
したがって「新版 量子論の基礎」のp229下段にあるように
干渉効果がCHSH不等式を破るので、この場合は破れない。
これは、アスペの実験等の結果と矛盾。
結論
ボブの所へ来るのは、アリスが測定した結果とは無関係の波動関数:
であり、
その時点での、アリスが測定した結果の波動関数:
や
とは異なる!
//
波動関数の定義は<q|ψ>なので、スピンにも波動関数が言える
スピンには、波動関数はないとよく言われます。
しかし、スピンの状態が1つの固有状態に収縮して値が
確定した時は、スピンの確率密度が、その値の所で
δ関数になります。
確率密度は、一般にψ*(q)ψ(q) ですから、
スピンにも波動関数が言えるはずです。
(確率密度のδ関数の2乗は「位置表示」の場合と同様適宜 定義されるとします)
まず、波動関数ψ(q)の定義は、物理量qの固有空間への
射影|q><q|から
ψ(q) |q>=|q><q|ψ>
ψ(q)=<q|ψ>
で定義されます。
(シュレーディンガ方程式の解だけではありません)
物理量qが連続固有値をとる場合、
<q’|q >=δ(q - q’)
なので、ψ(q)が δ関数になる場合があります。
この場合、確率密度のδ関数の2乗は、物理では適宜 定義される
とする必要があります。
例:
よくある「位置表示の波動関数ψ(x) 」は
ψ(x) |x>=|x><x|ψ>
「運動量表示の波動関数ψ(p) 」は
ψ(p) |p>=|p><p|ψ>
それで、スピンの場合
物理量σz, σy, σ_x の1つ1つに対して、
その固有空間{ |s>}への射影 |s><s| から
ψ(s) |s>= |s><s|ψ>
のψ(s)が、スピンの波動関数と言ってよいはずです。
具体的には、z方向でのスピンの状態が
a |+>+b |- >の場合、スピンの値は+1/2 と - 1/2 なので
波動関数ψ(s)=<s| ( a |+>+b |- > )
は、s軸上の+1/2 と - 1/2 の点にピークがある2つのδ関数の和
つまり、この場合の スピンの波動関数は
ψ(s) = a δ(s - 1/2) + b δ(s + 1/2)
となります。
//
測定でのもつれ状態に 観測者の状態 が入ることの証明
例えば、観測者を o とすると、
という式が、多世界解釈では、よく出てきます。
でも、この「測定でのもつれ状態に 観測者の状態 が入る式」は、
多世界解釈だけのものではなく、コペンハーゲン解釈でも言える
ことを証明します。
https://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/handai2009.pdf
のp17の記号を流用します。
(p17自体を議論するつもりは、ありません)
ここの図で Sは測定対象、Aは測定器、A’とかは観測者(や測定器)
です。
例えば、この図を電子のスピン↑↓ の測定とすると
観測者A’から見て、測定前の全体系の状態は
|↓S>|↓A>+|↑S>|↑A> (Aは測定器)
という量子もつれ状態です。
何故、この式になるかというと
状態|S>と|A>のすべてのケースを考えた状態は、テンソル積:
|S>|A>=( |↓S>+|↑S> )( |↓A>+|↑A> )
になりますが、これに射影測定の性質(結果がただ1つの固有状態になる)
より「1つの項に↑と↓の状態が含まれることは、ない」
ので、上の式になります。
A’は、測定器Aしか見ないのに、何故、全体系で考えるかというと
まだ測定が始まってない時に、測定器Aの表示を見ても意味ない
からです。
次に、観測者A’’から観測者A’を通して全体系をみると
状態|S>、|A>、|A’>のすべてのケースを考えた全体系の状態は、
テンソル積:
|S>|A>|A’> =( |↓S>+|↑S> )( |↓A>+|↑A> )( |↓A’>+|↑A’> )
になり、これに対し、上記と同じように、射影測定の性質を考えると:
|↓S>|↓A>|↓A’>+|↑S>|↑A>|↑A’>
という もつれ状態であり、観測者A’が入ってきます。
その結果、波動関数(状態)は、A'とA''では、異なることになります。
さらに、次の次のA''’から観測者A’’を通して全体系をみると
同じようにして、
|↓S>|↓A>|↓A’>|↓A’’>+|↑S>|↑A>|↑A’>|↑A’’>
であり、観測者A’’も入ってきます。
その結果、波動関数(状態)は、A'’’も、異なることになります。
したがって、p17の図の観測者A'、A’’、A’’’、、、毎に波動関数(状態)
があることになります。
これらの式には「観測者自身の状態」は含まれていない
つまり、A'の式には、A'の状態は入っていないことに注意
して下さい。
尚、もつれ状態の部分系は、混合状態です。
量子もつれ系の部分系が「混合状態」であることの証明 - 墓所の虫
波動関数は測定対象系に付属しているのではない(観測者毎に異なる)
僕は、昭和の頃、波動関数(状態)は測定対象系に付属する
かのように習いました。
学部で、初めて量子力学を学ばれる方も、最初はそう思う
のではないかと思います。
昔の教科書で学ばれた先生にも、まだそう思っている方もいます。
しかし、
波動関数(状態)や、その収縮には、
観測者毎に異なる場合があることを説明します。
もちろん、観測者がたくさんいても、1つの測定器を
見ているのであれば、同じになりますから、そういう意味では
客観的な存在です。
波動関数の収縮が客観的な事象ではない例
以下を読めば、十分わかるのですが、補足説明します。
波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe
説明:
空間的に離れた(=光円錐の外)のアリスとボブが、
自分の方に来た電子A,Bの「量子もつれ状態のスピン」を
いろいろなタイミングで測定した場合、
あとで、結果を持ち寄ると
アリスがAを測定して「↑か↓の1つになった瞬間には、ボブの方も↓か↑」
になっています(実験事実)
それで、今度は、ボブがBを全く測定しない場合、
アリスがAを測定して(射影仮説が適用されて)、状態が収縮して
↑か↓かの1つになっても(=スピン値の確率密度がδ関数になっても)
ボブの方は、測定してませんから、ユニタリな時間発展します。
つまり、簡単に言えば↑ と ↓ の重ね合わせ状態のままです。
(正確な説明は、上記図3の下にあります。それと下段の追記も重要)
つまり、アリスとボブで「状態も それが収縮する・しない」
も異なっています。
もちろん、波動関数(状態)が異なっても、測定対象は同じ
(同じ量子もつれ系という意味)ですから
その違いは、波動関数の干渉を測定しないと分かりません。
フォンノイマン鎖
https://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/handai2009.pdf のp17参照
(Sは測定対象、Aは測定器、A’とかは観測者や測定器です)
この図をみれば、波動関数が観測者毎にあるように思うでしょう。
それが正しいことを説明します。
例えば、これを電子のスピン↑↓ の測定とすると
観測者A’が測定して(射影仮説が適用されて)
その脳の状態が1つの状態 ↑ に
収縮した(スピン値の確率密度がδ関数になった)時で
かつ、A’’が、A’をまだ測定してない時、
A’’から見た全体系は、ユニタリな時間発展しますから
|↓S>|↓A>|↓A’>+|↑S>|↑A>|↑A’>
という もつれ状態であり、収縮していないです。
(何故、この式になるかの証明は:
測定でのもつれ状態に 観測者の状態 が入ることの証明 - 墓所の虫 )
ということで、波動関数(状態)は、A'とA''では、異なります。
今度は、観測者A''が測定したとすると(射影仮説が適用されて)
その脳の状態が ↑ に収縮します。
(同じになる理由は、測定対象Sの測定基底が共通なので)
この時、A''’にとっての全体系は、
未だ測定してないなら、ユニタリな時間発展しますから
|↓S>|↓A>|↓A’>|↓A’’>+|↑S>|↑A>|↑A’>|↑A’’>
であり、収縮していないです。
フォンノイマン鎖は、この状況が、ずーと続きます。
ハイゼンベルグ・カット
上記PDFのp18~19参照
ある方からハイゼンベルグ・カットがある位置から右で
自由に移動できることと、「観測者の意識で状態が収縮する」
のとは、矛盾するのではないか?
という指摘を頂きました。
これは、上記で書いたように、
・測定は観測者がそれぞれ行うものであり(A’だけではない)
・状態の収縮は、観測者それぞれに起きる
・ある観測者自身にとっては収縮(δ関数になる)しても、
外部の観測者にとっては(その外部の人が測定するまでは)もつれ状態
なので、矛盾しません。