もつれ対で、 誰かが一方を測定した直後、もう一方を測定する人の状態
量子もつれ対A,Bにおいて、誰かが一方の電子Aを測定したら、
もう一方の「測定前の人にとってのBの状態」
に対しても「値がすでに1つに決まってしまう」
とか「値は確定するが分からないだけ」
などと、専門家でもそう考える方は多いと思います。
仮に、アリスが地球にいて、ボブが月での場合で
アリスが測定した結果の情報や
「測ったけど結果は教えないよん」という情報
がボブに届く前の時点での「ボブにとっての状態」
を問題にしています。
尚、量子力学は、一般確率論の「無信号条件」が成り立つ
(堀田昌寛「入門/ 現代の量子力学」p225 参照)
なので
ボブの光円錐の外で何をしようが、ボブにつたわらない
というのが、この記事のミソです。
(光円錐の内側であれば、ボブが知らなくても状態は変化)
それなら「何故、アリスの測定結果にボブの結果が一致するのか」
という答えは:
何故、アリスの測定結果にボブの結果が一致するのか - 墓所の虫
簡単に言うと、もつれ対A,Bのスピンが、はなから 100%相関してるからと
|↑アリス>と|↓アリス>や、|↑ボブ>と|↓ボブ>が直交するからです。
決して「値がすでに1つに決まっている」からではない!
実験状況
波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe
の図3の時点の「イラストの式」の状況を考察します。
この状況は「アリスが測定していて、ボブはその結果を知らない」
です。(アリスが測定した事実だけは、ボブは知っている)
全体系の合成状態
図3のイラストの式は、
ボブにとっては、合成系にアリスが含まれることになるので
合成状態は、
になります。
ボブも測定するか、アリスから測定結果を得るまで、
この状態がユニタリな時間発展します。
ボブの方の電子Bだけの部分系
ボブの光円錐の外でアリスが電子Aを測定した直後の
ボブにとっての電子Bだけの部分系は、
上記の密度行列を、縮約したもので:
で、
これは、単に「どちらになるか分からない」であり、
「値がすでに1つに決まってしまう」
とか「値は確定するが分からないだけ」
という表現は、おかしいです。
アリスが電子Aを測定する直前との比較
直前の場合、全体系の合成状態は
1/ √2 |未測定{Alice}>|↑A>|↓B>+1/ √2 |未測定{Alice}>|↓A>|↑B>
「未測定」の効果は、どこにも影響を及ぼしませんから
この密度行列は
です。
この時のボブにとっての電子Bだけの部分系は、縮約して:
であり、上記の測定後と全く同じです。
したがって、
アリスの測定により「値がすでに1つに決まってしまう」
とか「値は確定するが分からないだけ」
という因果的な表現は、間違いです。