波動関数は観測者毎に異なることの証明(背理法)
波動関数は測定対象系に付属しているのではない(観測者毎に異なる) - 墓所の虫
で、
堀田先生のブログを引用したり、フォンノイマン鎖を使って
波動関数(状態)や、その収縮には、
観測者毎に異なる場合があることを説明したのですが、
これは、証明ではないので、ここで背理法を用いて証明します。
もちろん、観測者がたくさんいても、1つの測定器を
皆が見ているのであれば、波動関数は同じになりますから、
そういう意味では客観的な存在です。
尚、この証明には、清水明「新版 量子論の基礎」の
第8章 ベルの不等式
を引用しますが、ベルの不等式自体の説明はしませんので
証明を理解するには、この章をよく読んでおく必要があります。
実験の設定
p210 上段参照
ここの例8.2を使用します。
月へ来た粒子をA、地球へ来た粒子をBとする
月の観測者をアリス、地球の観測者をボブとする
アリスが先に測定し、ボブがその0.1秒後測定する(光円錐の外とする)
アリスの測定
アリスが先に粒子Aを測定し、仮にAの状態が+となったとすると
波動関数がどの観測者でも同じ場合(背理法)
式8.47は、(粒子Aが-の確率は0だから)
に収縮する。
仮にAの状態が-となったとすると
に収縮する。
このどちらかしかない。
ボブの測定
アリスより測定があとなので
波動関数がどの観測者でも同じなら
式8.47が収縮した上式が、ボブの所に来る。
CHSH不等式がどうなるか
アスペの実験等では、CHSH不等式の値の範囲が
-2√2 ~+2√2 になることが確認された
これを、CHSH不等式の破れと言う。
CHSH不等式を破るのは、 |+,- >と |-, + >の干渉効果である(p229)
ここでも、同様の実験を行いCHSH不等式の値の範囲を調べる。
もし、ボブの所に来た状態が
なら、
CHSH不等式の値の範囲が、-2√2 ~+2√2 になる(p229)
しかし、波動関数がどの観測者でも同じなら
ボブの所に来る状態は:
か
かの、このどちらかしかないので、
ボブの所で |+,- >と |-, + >の干渉効果は存在しない。
したがって「新版 量子論の基礎」のp229下段にあるように
干渉効果がCHSH不等式を破るので、この場合は破れない。
これは、アスペの実験等の結果と矛盾。
結論
ボブの所へ来るのは、アリスが測定した結果とは無関係の波動関数:
であり、
その時点での、アリスが測定した結果の波動関数:
や
とは異なる!
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