何故、アリスの測定結果にボブの結果が一致するのか
量子もつれ対を測定する場合と、1つの対象系を複数の観測者
が測定する場合で、アリスが最初に測定した時、
「アリスの測定結果にボブの結果が100%相関する」
ことを証明します。
尚、「値がすでに1つに決まっている」からではないです。
1.もつれ対A,Bを測定する場合
図を描くのが面倒なので、堀田先生のブログの図を援用します。
波動関数の収縮はパラドクスではない。 - Quantum Universe
の図3のイラストの式:
(ボブにとっては、合成系にアリスが含まれる)
において、
ボブも後から測定したとします。すると合成系にボブも含まれ
となります。
この密度行列を、アリスとボブだけ残して、縮約すると
です。
この密度行列で考えると、アリスが測定して↑だったとすると
だけとなり、ボブは、↓の状態だけになっています。
また、アリスが測定して↓だったとすると
だけとなり、ボブは、↑の状態だけになっています。
つまり、100%逆相関しています。
この理由は、粒子A,Bが、はなから100%逆相関だったからと
|↑アリス>と|↓アリス>や、|↑ボブ>と|↓ボブ>が直交する
からです。
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2.1つの対象系を複数の観測者が測定する場合
1つの光円錐内だったら、あまり意味がないので
アリスは地球、ボブは月、チャーリィは小惑星にいて、
その中間に測定対象系s(電子のスピン)と測定器dがあるとし
その状態を、
|↑s>|↑d>+ |↓s>|↓d>
とします。
アリスが測定すると、
|ψアリス> = |↑s>|↑d>|↑アリス>+ |↓s>|↓d>|↓アリス>
ボブが測定すると、
|ψボブ> = |↑s>|↑d>|↑ボブ>+ |↓s>|↓d>|↓ボブ>
チャーリィが測定すると、
|ψ_チャーリィ> = |↑s>|↑d>|↑チャーリィ>+ |↓s>|↓d>|↓チャーリィ>
観測者全員を含んだ全体系の状態|ψ>は
個々の系のテンソル積=|ψチャーリィ>|ψボブ>|ψアリス>
なので、これに、|↑XXX>と|↓XXX>は直交を考慮すると、
1つの項に|↑アリス>|↓アリス>や|↑ボブ>|↓ボブ>とかが
現れることはないので
|ψアリス> = |↑s>|↑d>|↑アリス>|↑ボブ>|↑チャーリィ>
+ |↓s>|↓d>|↓アリス>|↓ボブ>|↓チャーリィ>
この式を見ると
アリスが↑なら、ボブもチャーリィも↑
アリスが↓なら、ボブもチャーリィも↓
という組み合わせしかないです。
したがって、全員が100%相関しています。
理由は、|↑アリス>と|↓アリス>や、|↑ボブ>と|↓ボブ>とかが
直交するからです。
注意しないといけないのは、
測定対象が測定器との相互作用している時点でも、
ボブもチャーリィも、光円錐の外ならアリスも
彼らから見た系の状態は、ユニタリな時間発展をしている
ということです。
つまり、月にいるボブにとって、測定対象の状態が収縮して
1つの固有状態になるのは、最低でも 1.3秒後で、
小惑星にいるチャーリィは、もっとあとなのです。
状態(波動関数)も、その収縮も客観的存在ではないです。
また、状態(波動関数)の収縮は、いつ起きたが言えないので
物理過程ではないのです。
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