マクロな物理量の条件は?(何故アボガドロ数あれば十分か)
これは、清水明「新版 量子論の基礎」p108 脚注の問いです。
粒子の集団が「マクロ」と言えるのは、アボガドロ数あれば
異存はないでしょうが、
では、「10^12 個では? 10^6 個では? 10^3 個では?」
という問いです。
何故、アボガドロ数あれば十分かというと
Lim n→∞ a† |n> = a |n>
が成り立つからと思います。
例えば、a† |10^23個> ≒ a† |10^23±1個>
なら「マクロ」ということです。
しかし、|n>と |n±1>は直交するので、この式は間違いです。
広い意味でのデコヒーレンスが働いて、アボガドロ数付近で、
|n>と |n±1>が、事実上1次従属になる必要があります。
ただし、デコヒーレンス 自体は干渉を消すだけなので、それだけでは
複数の固有状態があるのに、固有値(=測定値)が期待値付近の1つだけ
になっていることが説明できません。
(期待値付近にならないといけないのは、エーレンフェストの定理からです)
つまり、事実上の波動関数の収縮が必要で、
それで、1つの固有値q(の固有ベクトル)になります。
でも、これでも未だ純粋状態(状態ベクトル)なので
正準共役量について、不確定性関係による広がりが問題になります。
これは、「期待値<q>を古典的な物理量」とすれば、
[<q>, <p>]=0 なので、<q>, <p>について
不確定性関係を無関係にできます。
期待値付近に固有値(=測定値)がなる固有状態への収縮
デコヒーレンスで密度行列の干渉項を0にしただけではダメで
密度行列の対角項を(期待値付近に固有値がなるもの)1つだけ
残してあとは、0にすることです。
ここまでは、1つ状態ベクトルで表される純粋状態です。
Lim n→∞ a† |n> = a |n>が成り立つよう
大きなn付近で |n>と |n±1>を事実上1次従属にすることです。
これは、「多粒子系の量子力学」として考えると、
|ψ1>= |ψ><n|n>
|ψ2>= |ψ><n±1|n±1>
で、|ψ1>≠ |ψ2>だったものが、|ψ2>=c1 |ψ1>
となることで、これが成り立つ |ψ>は存在しないですから
波動関数 ψ(x) =< x|ψ>は、消失します。
上記で、「物理量の古典化」が言えると思いますが、
では、何が、
「期待値付近に固有値がなる状態への収縮」→ 1つの状態ベクトル
「状態ベクトルの1次従属化」→ 波動関数の消失
を行っているのかと言えば
たぶん、「環境や自分自身の集団との相互作用」
だと思いますが、僕ではよくわかりません。
「環境との相互作用」は、よく研究されていますので
もっと「自分自身の集団との相互作用」の検討
が必要と思います。