テンソル積
1.ベクトルのテンソル積とは何か?
ブラ・ケット表記では、ベクトル|A>と|B>のテンソル積は、
|B>|A> と書きます。
ベクトル(=1階のテンソル)どおしのテンソル積は、
一般に2階のテンソルになります
通常は、|B>や|A>の右に、「空間を指定する添え字」を付けます。
テンソル積を、直積と書いてある本もあります。
便宜的に、横ベクトルと縦ベクトルを、ブラとケットで書くと、
(ブラ空間はケット空間より大きいので、厳密には、横ベクトル≠ブラです)
|A>が、
|B>が、
とすると、
となり、結果は行列です。
行列では、状態「ベクトル」と言えないと思われるでしょうが、
|B>|A> を、表記どおり計算して、
とすると、
という単なるベクトルになるので、2階のテンソルの形でも、
実態は、状態「ベクトル」である ということが言えます。
2.何故、テンソル積を使うか?
スピン1/2の粒子と、スピン1の粒子があった場合、
ある方向を基準にすると、
それぞれ、|+1/2>、|-1/2>と、|+1>、|0>、|-1> で、
合成系での状態の自然な表現は、
|+1/2, +1>、|+1/2, 0>、|+1/2, -1>、|-1/2, +1>、|-1/2, 0>、|-1/2, -1>
です。
つまり、合成系の状態の自然な表現は、
「各々の粒子の状態の内の1つをとる状態を、合成系が含む」
ということですから、テンソル積になります。
一般に、n状態とm状態の合成系は、n・m状態になります。
3.テンソル積の性質
(1) テンソル積は線形である。
a, b∈C、状態ベクトルψ1,ψ2∈H1、ベクトルφ∈H2 とすると、
(2) ベクトルψ1∈H1,ψ2∈H2、合成系Hのベクトルをφ とすると、
φ∈H には、どのようなψ1、ψ2の2項だけの積にもならないものがある
(Entangled状態)
ただし、どのようなφも、ベクトルの和や積で表すことができる。
(3) ベクトルψ1,φ1∈H1、ψ2,φ2∈H2、とすると、
テンソル積|ψ1>|ψ2>と|φ1>|φ2> の内積は、内積の記法(a、b)を用いて、
と定義される。