墓所の虫

.    「新版 量子論の基礎」と「量子情報と時空の物理」をベースに書いていますが、間違いをよくやります。まず眉にツバをつけてw

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私は言葉の使い方が下手なので、おかしいと思う文章は式に合わせてお読み下さい。
尚、新理論や独自理論を唱えるつもりはありませんが、アイデアの提案はしています。


距離空間の完備化(1)

例えば、有理数の集合Qにおいて、QxQとユークリッド距離ρを対にした距離空間(QxQ、ρ)とすると、 基本列{x_n}の収束する点が、有理数の組の点とは限りませんので、(QxQ、ρ)は、完備ではありません
(1次元(Q、ρ)でもダメです)
また、実数の集合Rにおいて、RxRとユークリッド距離ρを対にした距離空間(RxR、ρ)とすると、 これは、完備距離空間です。
(CxCでないと完備とならない距離空間もありそうです)

以下、Murakさんのコメントと宿題

Xを距離空間とし、X上の基本列の全体を仮にC(X)と書いておく。
C(X)の元(すなわちX上の基本列)の間に、次の方法で同値関係を定義することができる。

定義:二つの基本列{x_n},{y_n}が同値({x_n}~{y_n})であるとは
「n→∞のときρ(x_n,y_n)→0」が成立することをいう
(問1:この関係~が同値関係が満たすべき条件を満足している事を確認せよ)

問題は、C(X)をこの同値関係で割った商集合(あるいは同値類集合)C(X)/~がどのようなものになるかであるが、
これを理解するために、次のような事を考える。

まず、基本列として、すべてのnに対してXの同じ点xを対応させるような自明(?)なものをとることにして、
これを仮に{x}と書いておく。このときXの点xに収束するような任意の点列{x_n}は点列{x}と同じ同値類に入る。

そこで、Xの点xと、点列{x}を含むようなC(X)の同値類とを対応させることにより、 集合Xから集合C(X)/~への単射を構成することができる。 (つまり、点xと{x}を含む同値類を同一視することで、Xが C(X)/~に埋め込まれていると考えることができる)

(問2:上の対応関係がXからC(X)への単射になっていることを確認せよ。
 問3:このときXの距離ρによりC(X)/~にも自然に距離が定義されることを示せ。
 問4:C(X)~は完備か?)

こうして、距離空間Xと距離空間C(X)/~の間に集合としての包含関係があることがわかった。
従って、XとC(X)/~の関係として論理的にあり得るのは、両者が一致してしまうか、
あるいはXがC(X)の真部分集合になっているかのどちらかである。

前者が起こる、すなわち集合XとC(X)/~が一致する場合は、
Xにおける全ての基本列はXの中に極限を持つことになるので、 これはXが距離空間として完備であるという事に他ならない。

この場合当然の事ながら、ブログの記事中に云う第2類の基本列(あるいは基本列の同値類)は無い。 一方、XがC(X)/~の真部分集合である場合には、第2類の基本列が存在する。つまりXは完備でない。 その場合はXの代わりにC(X)/~を考えることで、
Xはある完備距離空間に等距的に埋め込まれていると考えることができる。

前回の記事「同値類の疑問」の確認:
C(X)の同値類には、
距離空間X内の点に収束するような点列{x_n}について、代表元を[(xn|n∈N)]とする同値類の集合{Ea1、Ea2、、}   収束する点がXに含まれない点列{y_n}について、代表元を[(yn|n∈N)]とする同値類の集合{Eb1、Eb2、、}  の2種類があります。(Ex1,2、3,,の番号は収束点に対応するものです。xnのnとは関係ありません) C(X)は、Ea1 U Ea2 U、、、 U Eb1 U Eb2 U、、、 となり、 C(X)/~は、{Ea1、Ea2,,,、Eb1、Eb2,,,}となる。
と思うのですが。

それから、
> 二つの基本列{x_n},{y_n}が同値({x_n}~{y_n})であるとは
> 「n→∞のときρ(x_n,y_n)→0」が成立することをいう
ですが、
1.C(X)上の2つの元 点列(xn|n∈N)と(yn|n∈N)に対して、実数列(ρ(xn,yn)|n∈N)がn→∞で   収束することが示せます。内田伏一「集合と位相」p150
2.よって、d((xn|n∈N),(yn|n∈N))=Lim[n→∞]ρ(xn,yn) として関数d:C(X)×C(X)→R が定義できる。
3.二項関係を、C(X)上の2つの元(xn|n∈N)と(x'n|n∈N)に対して、d((xn|n∈N),(x'n|n∈N))=0   となる時、
  (その時に限って)、(xn|n∈N)~(x'n|n∈N)という同値関係を定義する。
つまり、仮に、点列(x'n|n∈N)の収束する点が距離空間Xに含まれない場合でも、d
の存在により、
d~([(xn)]、[(yn)])=d*((xn),(yn)) によって、d~を用いて、3の同値関係が定義できるので C(X)/~は、上記{Ea1、Ea2,,,、Eb1、Eb2,,,}という集合になり、これは、元に注目すれば完備です。

前、「商集合とは、そもそも、同値類Xを、ずばり書くためのものしょうか?」
と書いたおり、Hirotaさんが、
>商集合は「同一視」とか「粗視化」で見えるようになる数学的構造を取り出す/作り出す手段です。
(偶数/奇数の関係を取り出す手段が Mod 2 の同値類、完備化で追加する要素を作り出す手段が基本列の同値類) とResされましたが、
C(X)/~を使うことが「粗視化」であり「数学的構造を取り出す/作り出す」ということで、
やっと意味が理解できました。

問1:この関係~が同値関係が満たすべき条件を満足している事を確認せよ。
   同値関係の定義:
     ある集合 S において、二項関係 ~ が次の性質を満たすとき、~ は S の同値関係であるという。
     反射律: a ~ a.
     対称律: a ~ b ⇒ b ~ a.
     推移律: a ~ b かつ b ~ c ⇒ a ~ c.
     ~ が上記の関係であるとき、a と b は同値である と言い表し、a~b a≡b などと書く。
   (1) 反射律は、{x_n},{xn} なので「n→∞のときρ(x_n,xn)→0」で、ρの定義から自明
   (2) 対称律は、{yn},{xn} なので、ρの定義から「n→∞のときρ(yn,xn)→0」が言える。
   (3) 推移律は、{x_n},{yn}{zn}において、「n→∞のときρ(x_n,yn)→0」かつ、
       「n→∞のときρ(y
n,zn)→0」が成り立つならば、
       ρについての極限の性質から「n→∞のときρ(x_n,z
n)→0」が言える。
(続)