Note11.完備な内積空間(ヒルベルト空間)
K上のベクトル空間とは、和とスカラー倍が定義された空間(集合)で
(f+g)(v)=f(v)+g(V) (f,g∈V v∈V)
(cf)(v)=cf(V) (c∈K)
V ≠ φ
が成り立つVです。
(スカラー倍といっても、cは逆数でもいいので割り算も有りです)
したがって、Kが、自然数や整数では、割り算が閉じませんから
Kは、有理数Q、実数R、複素数C のいずれかです。
ここで、Kが有理数のベクトル空間Q^2 を考えると
(1,0)と(0,1)の和は(1,1)で ∈ベクトル空間
ですから、ベクトル空間としては、何の問題もないですが、
内積空間の定義:
Note10.内積空間(標準内積とエルミート内積) - 墓所の虫
から言うと
(1,1)の自分自身との内積は、√2で、(√2、0)というベクトルは
Q^2 に含まれません。
一般に、内積の値を要素に含むベクトルが、その内積空間に含まれない場合、
「完備でない」といい、(Kが、RやC なら「完備」)
Q^n を、R^n とかにすることを「完備化」といいます。
特に、完備なを内積空間をヒルベルト空間と呼びます。
完備化の方法
略(参考:距離空間の完備化(1) - 墓所の虫 )
ヒルベルト空間
ヒルベルト空間R^∞やC^∞のベクトルの濃度は、
非加算個なので、その基底の濃度も非加算個のような気がしますが
基底の和を考えるとベクトルの濃度は、非加算個になり、
基底の濃度は加算個でも、OKです。
内積の値が∞のベクトルは、内積空間には入りません。
物理の話になりますが、
状態ベクトル|ψ>の位置の固有空間への射影|x><x|は
|x><x|ψ>=f(x)|x>であり、
位置が1つの値をとる場合、f(x)はδ関数になります。
また、<x1|x2>=δ(x2-x1) ですから、
位置|x>のような、連続固有値をもつ固有空間のベクトルは
ヒルベルト空間には入りません。