Note10.双対空間(縦ベクトル・横ベクトル)
これまでは、単にベクトルとして言ってきましたが
量子力学では、ケットは、縦ベクトル、
ブラは、(同じ次元の)横ベクトルの2つがあり、
<x|ψ>= ψ(x) スカラー(の関数)
なんてやります。
これが、何故、言えるか考えてみます。
そんなこと、当たり前だろ!! と言われると思いますが、
縦ベクトル|ψ>に「何か」して、スカラーという「別のもの」になる
ということは、
「何か」は写像です。
始めから「横ベクトルを掛ける」とは、決めつけられません
(最終的には、これが「横ベクトルを掛ける」であることを示しますが)
1.双対空間
Kを体とする(例えば複素数体)つまり、スカラーというのがミソ
VをK上のベクトル空間とする (空間です。ベクトルではない)
VからKへの線形写像fを、Vの線形汎関数という。
(何故、汎関数かというと、対象が個々のものでなく空間全体だから)
で、このfの全体をVと書き、双対空間 と呼ぶ。
(線形汎関数の像=Vの元=ベクトル)
2.したがって、横ベクトルの成す空間は、縦ベクトルの「双対空間」である。
双対というからには、縦と対になるのは横しかないじゃないか!
というのは、数学ではないw
3. 双対空間Vは、
和とスカラー倍が定義される(これは、ベクトル空間の定義)
(f+g)(v)=f(v)+g(v) (f,g∈V v∈V)
(cf)(v)=cf(v) (c∈K)
V ≠ φ
したがって、Vは、K上のベクトル空間である。
4.補題 (三宅敏恒「線形代数学」 定理7.1.5)
体k上のベクトル空間Uからベクトル空間Vへの
線形写像全体の集合をHom(U、V) と書く。
Dim(U)=n Dim(V)=m とすると、
Hom(U、V)は次元がmxnであるベクトル空間となる。
(証明は略)
5.補題 4より、双対空間Vは、
V=Hom(V、K) は、K上のベクトル空間で、
Dim(K)=1(つまり、スカラー)であるから、
Dim(V)=Dim(V) となり、
Vの表現を、縦ベクトルとすれば、ベクトルの掛け算の定義から
Vの表現は、横ベクトルとなる。