Note8.固有値と固有ベクトル(固有空間)、対角化
1.固有値と固有ベクトルの定義
線形変換T:V→V とする。
T(u)=λu (u∈V u≠0 λ∈R)
となるλを固有値と呼び、
uを固有値λに属する固有ベクトルと呼ぶ。
2.行列の対角化
行列Bを線形変換T(B)により、対角行列A にすることを
行列の対角化という。
ベクトル空間Vの基底を u1、u2、、、uN とする。
この時 T(ui)=λui(つまりTの固有ベクトル)となっていたなら
T を行列で表すと、対角要素を λi とする対角行列Aになる。
この行列A は、図で書くと、
U -(A)→ λU
| |
P P P:恒等写像
↓ ↓
U -(B)→ U
の関係であり、
左上端から右上端に行ったのと、下を通って行ったのが
同じ結果になることから、
A=T(B)=P^-1BP
が言える。
この 対角行列Aを求めることは、即ち P^-1BPの行列P
を求めることに等しい。
Pは、上記より、(u1、u2、、、uN)という行列となる。
特に、A、Pが実数行列なら「Bは実数体上で対角化される」という。
実際の対角化計算は、行基本変形 で行うのが普通です。
線形代数のEssence 05-1.行列の基本変形(前編) - YouTube
3.固有空間の定義
1において、固有値λに対して、
集合W(λ、T)={u∈V|T(u)=λu}とおき、
このWをTの固有値λの固有空間という。
問題5.3-5(p105)
2において、W(λ、T)は、Vの部分空間となることを示せ。
証明: 部分空間となる3条件を示せばよい。
条件1 T(0)=0 - λ0 であるから 0∈W(λ、T)
条件2 u,v∈W(λ、T)とする。T(u+v)=T(u)+T(v)=λ(u+v)
したがってu+v∈W(λ,T)
条件3 c∈Rとする。T(c u)=T(c u)=λ(c u)
したがって c u∈W(λ,T)
//
4.固有多項式
定義: nxnの正方行列Aに対し、
gA(t)=|tE - A|
という行列式の結果の多項式を固有多項式という。
gA(t)の根 λ1、λ2、、、λn が 行列Aの固有値になる
証明:
vを固有値λの固有ベクトルとする。つまり、Av=λvである。
したがって、(tE - A)=0 となる。
vは0ベクトルでないので、|tE - A|=0でなければならない。
5.特別な行列の対角化
エルミート行列
定義
・Aは、正方行列である
・A=A* が成り立つ(A*とは複素共役をとって転置)
この定義が成り立つ実数行列を 対称行列 と言います。
エルミート行列と対称行列をまとめて対称行列と呼ぶ文献
もあります。
定理9.2.2 エルミート行列の固有値は実数である
証明 (後日)
ユニタリ行列
定義
・Uは、正方行列である
・U*U=I が成り立つ(U*とは複素共役をとって転置)
この定義が成り立つ実数行列を 直交行列 と言います。
定理9.2.10 ユニタリ行列Uは、エルミート行列Aを対角化する
U^-1 A U は、対角行列になる。
証明 (後日)