ベルの不等式-計算終(新版 量子論の基礎より)
7.真ん中の地点から「上下のスピンの重ね合わせになっている」
Entangledな電子を飛ばす
簡単にするため離散スペクトルの場合だけ考えます。
ボルンの確率規則より
確率p(a,b)=||a,b><a,b|ψ>|2=<ψ||a><a||b><b|ψ>
<A B>=Σ[a,b]abp(a,b)=Σ[a,b]<ψ|a|a><a|b|b><b|ψ>
=<ψ|AB^|ψ>
ここで [A^ B^]=0 なので A^とB^は交換します。
「月にa=+1、地球にb=-1」という状態を↑
「月にa=-1、地球にb=+1」という状態を↓とし、
その重ね合わせを
|ψ>=(|↑,↓ > - |↓,↑> ) / √2
とします。
通常は、テンソル積で計算するところを、この本の通りに計算します。
テンソル積では、|ψ>=( |↑>|↓> - |↓>|↑> ) / √2 です。
Aθを求めるために、まず、θ=0を計算する。
A0は、|a,b>の固有状態であるから、A0)=a|a,b>
また、A0は、Σa|a,b><a,b| でもある(スペクトル分解)
で、上記の↑↓の関係から
A0)=Σa|a,b><a,b|=Σ( |↑,b><↑,b) - |↓,b><↓,b|
<以下、T_Naka様のアドバイスで訂正
A0から、Aθを算出することを考える。
そこで、
Aθ=Σ( |↑',b><↑',b) - |↓',b><↓',b|
|↑',b>=f1(θ)|↑,b> + f2(θ)|↓,b>
|↓',b>=g1(θ)|↑,b> + g2(θ)|↓,b>
(|↑,b>と|↓,b>も、規格化されており直交するとする)
(f1(θ)、f2(θ)、g1(θ)、g2(θ)は、実関数で直行するとする)
とおく。
規格化していますから、
f1(θ)2+f2(θ)2=1 g1(θ)2+g2(θ)2=1
<↓',b|↑',b>は直交するので0ですから、f1(θ)g2(θ)+f2(θ)g1(θ)=0
<↑,b|↑',b>=f1(θ) <↓,b|↑',b>=f2(θ)
<↑,b|↓',b>=g1(θ) <↓,b|↓',b>=g2(θ)
|↑',b>=f1(0)|↑,b> + f2(0)|↓,b>=|↑,b>
よりf1(0)=1 f2(0)=0
|↓',b>=g1(0)|↑,b> + g2(0)|↓,b>=|↓,b>
よりg1(0)=0 g2(0)=1
また、<↑,b|↑',-b>は、直交します。(-bはθ+πに対応します)
<↑,b|↑',-b>=f1(θ+π)=0
<↓,b|↑',-b>=f2(θ+π)=1
<↓,b|↓',-b>=g2(θ+π)=0
<↑,b|↓',-b>=g1(θ+π)=1
この結果と、座標回転の行列とを見比べると、
|↑',b>=cos(αθ)|↑,b> + -sin(αθ)|↓,b>
|↓',b>=sin(αθ)|↑,b> + cos(αθ)|↓,b>
で、α= -1/2
したがって、
|↑',b>=cos(θ/2)|↑,b> + sin(θ/2)|↓,b>
|↓',b>=-sin(θ/2)|↑,b> + cos(θ/2)|↓,b>
となる。
これを、Aθ=Σ( |↑',b><↑',b) - |↓',b><↓',b| ) に代入すると、
>
Aθ=cosθΣ( |↑,b><↑,b) - |↓,b><↓,b| )+sinθΣ( |↑,b><↓,b) + |↓,b><↓,b| )
したがって、上記の↑↓の関係から
Aθ|ψ>={cosθ( |↑,↓> + |↓,↑> ) - sinθ( |↑,↑> - |↓,↓> )}/√2
同様に
Bφ|ψ>={cosθ( |↑,↓> + |↓,↑> )+sinθ( |↑,↑> - |↓,↓> )}/√2
これで、やっと、相関が計算できます。
<ψ|AθBφ|ψ> = -cosθcosφ - sinθsinφ = -cos(θ-φ)
<ψ|AθBφ'|ψ>= -cos(θ-φ')
<ψ|Aθ'Bφ|ψ>= -cos(θ'-φ)
<ψ|Aθ'Bφ'|ψ>= -cos(θ'-φ')
∴C=-cos(θ-φ)-cos(θ'-φ)+cos(θ-φ')-cos(θ'-φ')
で、いろいろ試して、例えば、
の時、C=-2√2 となり、ベルの不等式を破る
これは、古典論的限界の2(隠れた変数があって一致する場合)よりも
強く相関する ことを表す。
相関は、<ψ|AθBφ|ψ>= -cos(θ-φ) であるので、
θ=φ であれば 100% である(ただし逆相関)
これは、A点とB点が、互いに光円錐の外であることを考えれば
驚異と思うべきでしょう。
何故なら、角運動量保存則は成り立たないといけないですが、
成り立たせるために「隠れた変数」を導入しても
「実験と合わない」
のです。
8.古典的限界より強く相関する原因
それは、上記の↑↓の重ね合わせの結果生じる「干渉項」のためである。
重ね合わせを単純平均した相関、つまり、
<↑,↓|AθBφ|↑,↓>と<↓,↑|AθBφ|↓,↑>の平均は、
-cosθcosφ であり、
正しい相関 <ψ|AθBφ|ψ> = -cosθcosφ - sinθsinφ と一致しない
その差 -sinθsinφ が干渉項である。
もし仮に、干渉項がないとすると、
<ψ|AθBφ|ψ> = -cosθcosφ
<ψ|AθBφ'|ψ> = -cosθcosφ'
<ψ|Aθ'Bφ|ψ> = -cosθ'cosφ
<ψ|Aθ'Bφ'|ψ>= -cosθ'cosφ'
となり、
Cは、±2の間におさまる
原因を「一方が↑になったのが、瞬時に、もう一方に伝わった」と
考えるのは、誤解です。
それは、運動する他の系から見て、「先に↑になった方」というのが、
逆方向に運動する系から見ると、逆転するので、
どちらから、どちらへ伝わった とは言えないからです。