ボルンの確率規則の数学的機構(試論)
射影仮説の役割には、2つあり、
A 固有状態間の干渉をなくす(密度行列の非対角項を0にする)
B その中から、ある1つの固有状態を選び出す。
そして、Bでの「選び出される確率」は、ボルンの確率規則に従う
という形になっています。
ボルンの確率規則は、
・選び出され方は、基本的にはランダム
・測定する物理量をa とすると、波動関数ψ(a) がδ(a-a') になる確率は
ψ*(a)ψ(a) に比例
・∫ψ*(a)ψ(a) da =1 (100%)
ここでは、役割B に「ボルンの確率規則」を含めて、その成因を考えます。
(役割Aは、デコヒーレンスとか部分空間をとるとかで満たされているとします)
まず、道具をそろえます。
1.δ関数は、ヒルベルト空間には入らないので、δ(a-a') は、
a' の周りのごく狭い範囲を考え、それをa' で代表させます。
(ごく狭い短冊状の関数Δ(a-a') を考え、∫Δ(a-a') da=∫δ(a-a') da とする)
2.固有値a' の集合はR ですが「原点からa' までの空間ベクトル」の集合
とみるとー直線に並びます。空間ベクトルを|a' ) と書きます。
この|a' ) では、内積(a2|a1) が定義され、集合は完備ですから
ヒルベルト空間を成します。
3.波動関数ψ(a) は、物理量a の固有空間への状態ベクトル|ψ>の射影
から定義されます。
ψ(a)|a> = |a><a|ψ>
さらに、ψ(a) は、シュレーディンガー方程式に従って時間発展します。
ここでは、簡単のために、
ψ(a, t)=φ(t) ψ(a)
と書けるとします。つまり、定常状態を考えるわけで
φ(t)=exp(-i Et/h')
です。
本論1: 射影仮説の役割のB の数学的機構 連続固有値の場合、ψ(a, t)|a>の|a>は無限次元です。 ψ(a, t)|a>が張る空間と
(続)