はじめに1.ベクトルの縦・横、ブラケット表記
註:
ブラケット表記を、早い時点から使いたいので、
「数学は、ベクトル空間の定義から」と割り切って、まず初めに
行列を導入し、それにより、縦ベクトルと横ベクトル を定義します。
ベクトルの厳密な定義は、あとで「ベクトル空間」の節でします。
また、行列の厳密な定義も、あとで「線形変換」の節でします。
線形代数の教科書は、まず「ベクトル空間の定義」で始めるものが多いですが
それでは、双対空間が出てくるまで、縦ベクトルと横ベクトル
の区別がないです。
(そもそも、数学で、縦や横というのは、普通に考えたらナンセンス)
双対空間を定義しても、ベクトルに2種類ある というだけで、
縦ベクトルと横ベクトル は、掛け算の仕方を定義しないと
言えないので、まず、行列を定義することにより、
縦ベクトルと横ベクトル を導入し
「ブラケット表記」を使うことにします。
行列 (ここでは「行列」と「行列の表記」を区別しません)
行列とは、数や変数、1つの値を返す関数(これらをスカラーと呼ぶ)
を、縦 横 に一定個数、並べたもの(1個1個を要素と呼ぶ)
とします(∞個でも良い)
要素の先頭の行や列が -∞の場合は、書きようがないですが、
それでも行列とします。
横方向を「行」、縦方向を「列」とし、
行数を n、列数を m とすると(列の要素数がnとなる)
これを n xm 行列 と呼びます。
そして、要素を1個1個として見るのではなく
「1行の要素 まるごと」「1列の要素 まるごと」
と見て、これを、横ベクトルと縦ベクトル として
m次元の横ベクトル:
nxm 行列の ある1行まるごと(行の要素数がm)
n次元の縦ベクトル:
nxm 行列の ある1列まるごと(列の要素数がn)
と定義します。
要素の範囲が-∞からの場合や、要素が連続していれば、
書きようがないですが、それでもベクトルとします。
なので、関数であっても、ある条件を満たす関数は
ベクトルと言えます。
ここで、横ベクトルaをブラ、縦ベクトルbをケット と当面は定義し
<a|、|b>
と書きます(ブラ・ケット表記)例えば:
それで、内積(あとで定義します)を、普通の線形代数の教科書では
aやbが、横であっても縦であっても (a・b)と表記しますが、
これは、ブラとケットでは
<b|a>
と表記します。
あとで出てきますが|b><a|という直積や|b>| a>というテンソル積もあります。
尚、行列は、2階のテンソル、ベクトルは、1階のテンソル
という言い方もあります。そういう意味では、
行列を、紙面の垂直方向にいくつか重ねれば 3階のテンソル
4次元方向にも重ねれば 4階のテンソル
です。