1.4 混合状態の純粋化
この記事は、堀田昌寛「量子情報と時空の物理」第1章 についてです。
(私が読んで理解したことを書いています。誤りがあれば私の責です)
混合状態は(古典的状態を混合状態と見做せる場合も)
ヒルベルト空間を十分大きくとれば、純粋状態にできます。
[純粋状態|ψ>と密度行列ρ の関係]
例えば、|ψ>を|a>と|b>の重ね合わせ、ρを「a」か「b」のどちらか一方
とすると、(確率は、Pa, Pb)
<ψ|=<a|+<b|=√Pa(1, 0)+√Pb(0,1)=Σ √P_n|a_n>
=Σ P_n|a_n><a_n|+非対角要素(干渉項)
一方、ρは、
=Σ P_n|a_n><a_n|
なので、一般に、
|ψ><ψ|を対角要素だけにしたもの(干渉項を0にしたもの)が、密度行列ρである。
[混合状態の純粋化の処方]
ある系Sの物理量aの混合状態を表す密度行列ρのスペクトル分解を
と書く。
ここで補助系W(次元がSと同じかより大きいヒルベルト空間)を考え、
W内の直交するN本の単位ベクトル|V_n> (n=1~N) を使って
という状態ベクトルを定義すると、これが目的とする純粋状態になる。
証明:
を、補助系のVについて縮約したものが ρになることを示す。
であり、|V_n><V_n| は単位行列になる。
これを、補助系のVについて縮約したものは、Sの部分だけになり
となる。
∴ 純粋状態|Ψ>のよけいな系Wを縮約すると、元のρ_Sになる
ただし、|Ψ>は一意ではなく、補助系の|V_n>をユニタリ変換したものも同じ状態になる //
厳密ではないが、ヒルベルト空間を大きくとるというのは、
「混合状態でのAという状態」を「測定すればAである状態」とすること
に、だいたい相当します。