粒子の位置は実在ではない(一般に物理量は実在ではない)
量子力学での「粒子」は「点」です。何故なら、位置演算子の固有ベクトルを |x> と書くと
<x'|x>=δ(x-x') であり、ちょっとでも離れれば0で、
分裂したり、ぼやけて広がっているなら、この式はδ関数になりません。
では、
粒子は「必ず常に どこかの1点には存在する=実在している」と思っていいのでしょうか?
アインシュタインらの「実在」の定義は:
http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/lecture_note/kstext04_ohp.pdf
>完全な理論には、実在のそれぞれの要素に対応する要素が、理論の中にあるべきである。
>ある物理量が「実在する」と言えるための十分条件は何かというと、
>その物理量を有する系の状態を乱すことなしに、
>その物理量を確実に予言することが可能であること
とあります。
x座標軸上のどこかの1点に必ず存在している点は、座標軸を数直線とみなすと
必ず実数値 をとります。(y座標、z座標でも同様です)
粒子の位置が「実在」なら「必ず x座標の1つの値をとる」
つまり、
粒子は、どんな状態でも、どこに存在するかはわからないが
(1) 粒子は「必ずどこかの1点には存在する」=「必ず x座標のある1つの値をとる」
という主張を、ここでは「粒子の位置は実在である」とする主張と呼びます。
もちろん、位置演算子を「位置の固有状態」に作用させれば、
x^|ψ>= x1|ψ> となり、
この場合の位置x1は「x座標の どこか1つの値」をとること に間違いはありません。
なので、測定前とかの 何も作用させていない状態で、
「粒子の位置は 必ず常に x座標の1つの値をとっている」と言う主張
を問題にしています。
ここでは、1の主張から、もっと緩い、
(2) 粒子がとる位置xは ある適当な位置x0より『小さい値』か『大きい値』を、常にとる
という主張で考えてみます。
(xやx0を、一般の値qやq0に置き換えてもいいですし、離散系にも適用できます)
(2)が 否定できれば、(1)の主張も否定されます。
以下で、位置が純粋状態の重ね合わせとすると、(2)が否定できることを示します。
証明:
粒子が存在する位置が、x軸上のある適当な位置x0より『小さい』状態を|->、
『等しいか大きい』状態を|+>とします。
(位置でない他の物理量q^の場合でも、q軸上で同様に考えればいいです)
学部で習う普通の量子力学では、これを (1,0) や (0,1) で表します(状態ベクトル)
測定前、粒子が、x軸上の1ケ所の位置に存在するならば、
1.|->が100%で|+>が0%(存在しない) の状態
または、
2.|->が0%(存在しない)で|+>が100% の状態
のどちらかであって、どっちかだけ ということです。
これは |-> と |+>の重ね合わせ ではありません
重ね合わせなら、|->も|+>も両方、存在し
どっちかだけ ではありません。
つまり、これは、1と2の「混合状態」です。
ということは、前提の |-> と |+>の重ね合わせ状態 と矛盾
∴ 「粒子の位置xは ある値を常にとる」という主張は誤り
したがって、一般には、粒子の位置は実在ではない!
別の見方をすると、
一般に |-> と |+>の重ね合わせ(純粋状態)を考えると、
状態ベクトルは、
a2を |->の確率、b2を |+>の確率 とすると(重ね合わせなら a, b≠0)
a|-> + b|+> = (a, b) となります。
これは、a≠0 なら |->が 何%でか多少存在する。
存在するかどうかのYes/Noで言えば (1, 0)と同じことである と言えそうですが、
しかし、
上記の1であれば、|+>が0%なのに、b≠0 です(|+>が有る)
また
2であれば、|->が0%なのに、a≠0 です(|->が有る)
これは、どっちかだけ=100%有るか全く無い と仮定なのに、
全く無いした方に「少しは有る」ということで矛盾
したがって、(2)は否定され、(1)も否定されます!