ハミルトニアンの曖昧性(ワイル順序)
古典ハミルトニアンから量子力学のハミルトニアン を
一意に定めることは、一般にはできない旨、
清水明「新版 量子論の基礎」にあります。
例えば、古典的物理量に 2q2p2 という項があった場合
そのままでは自己共役演算子でないので、
qp2q^+pq2p^ として自己共役演算子にしますが
qpqp^+pqpq でも正しいです。
(古典ハミルトニアンとしては同一)
でも
両者の与える結果は異なります(両者の差は、-(qp^-pq^)2=h’2 です)
さらに、2q4p2という項があるとして、
上の例の左右にq^をかければ、自己共役に
なりますが、結果の差は、h’2q2 で、演算子になりさらに深刻です。
これを、「順序の問題」といいます。
もっと単純に、調和振動子のハミルトニアンに (pq^-qp^)を付け加えた場合、
古典的ハミルトニアンでは、0の項ですから、何の影響もでませんが、
量子力学では、pq^-qp^≠0 ですから、結果は、付け加えない場合と異なります。
経路積分の場合、その導出の途中で、
|q><q|と|p><p| を挿入します。
直接pやqを掛けるわけではないですが、
「順序の問題」が残ります。
に、|q_j><q_j|と|p_j><p_j|を挿入して、
テーラ展開すると、順序の問題を引き起こすことになります。
これを避けるため、
-iτ/h’<p_j | H(p、q) | q_j>
を「ワイル順序」によって、
-iτ/h’<p_j | q_j> H(p、Q)
ただし、Q=1/2 (q_j+1 + q_j) つまり平均値
として、処理します。