俗説の間違い-量子力学は「不明な量がある確率理論」
古典的確率理論は、今期待されている「一般確率論」とは違い
不明な「真の値」を確率的に推定する古典論です。
しかし、古典論は、全ての量の初期値を「きっちり」指定
すれば、100%結果が定まります。
なので、古典論と古典的確率理論は、相容れません。
そういう意味で、古典的確率理論は「不完全な理論」です。
量子力学も、計算結果は確率的(の場合が多い)ですが
「完全な理論」です。
(何故、計算結果が確率的になるかというのは後述)
1.量子力学は、なぜ完全と言えるかというと、
↓ の清水先生のEPR論文の解説にあります。
清水明「EPRパラドックスからベルの不等式へ」
http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/lecture_note/kstext04_ohp.pdf
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完全な理論には、実在のそれぞれの要素に対応する要素が、理論の中にあるべきである。ある物理量が「実在する」と言えるための十分条件は何かというと、その物理量を有する系の状態を乱すことなしに、その物理量を確実に予言することが可能であることだ。
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これを、突き詰めると、
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量子論が正しいとすると、次のうちの「どちらか」だ:
(1) 量子論の波動関数による実在の記述は完全ではない。
(2) 2つの物理量が同時には実在しえない場合がある。
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この疑念(というか(1)だという攻撃)が、EPR論文で、
ベルの定理を経て、アスペの実験で、(2)が証明されました。
∴ 量子力学は、不明な量がないという意味で「完全な理論」です。
2.多くの場合、計算結果が、なぜ確率的になるかというと
1つの物理量さえ、それが純粋状態で、固有値が広がって分布している場合
「測定前には実在しえない」からです。それは、
粒子の位置が「測定前には、どこかの1点に居るとは言えない」ことの証明
https://kafukanoochan.hatenablog.com/entry/2020/05/23/023621
で示したことから、上記の実在の意味で、
粒子の位置が「測定前には実在しえない」と言えます。
粒子の位置だけでなく、一般に、物理量q^について、
測定値(=固有関数の固有値)は、
測定前に、波動関数ψ(q)が広がっている場合、
1つの値をとっていません
(1つの値をとっているとすると、上記証明より矛盾)
しかし、測定後、この実在しない広がった状態が、
1つの値をとるわけです。そうなるということは、
ランダムに成らざるを得ない=確率的になる(確率密度はψ(q)*ψ(q)になる)
のは、当然と言えます。