墓所の虫

.    「新版 量子論の基礎」と「量子情報と時空の物理」をベースに書いていますが、間違いをよくやります。まず眉にツバをつけてw

ブログの紹介 (主な記事、Webサービス)

大学教育は危機に瀕しています! 


私は言葉の使い方が下手なので、おかしいと思う文章は式に合わせてお読み下さい。
尚、新理論や独自理論を唱えるつもりはありませんが、アイデアの提案はしています。


運動量表示の確率の保存

普通の波動関数(x表示)の確率流密度j(x)は、

j(x)=h'/2i m { ψ*(x,t)∇ψ(x,t)-ψ(x,t)∇ψ*(x,t) }

であり、確率(密度)の保存は

∂/∂t(ψ*(x,t)ψ(x,t) ) + ∇・j(x)=0

です。 これは、∂/∂t(ψ*ψ)に、シュレーディンガ方程式を適用すると出てきます。

それでは、運動量表示のψ(p,t) では、どうでしょう?

フォンノイマンの一意性定理は、通常、シュレーディンガ表示と ハイゼンベルグ表示が、ユニタリ同値であることを証明するのに 使いますが、 位置表示と運動量表示がユニタリ同値であることも言えます。

[証明] (ユニタリ同値や既約表現とかの定義は、新版 量子論の基礎p127 参照) ヒルベルト空間H上の正準交換関係を満たす自己共役演算子p、qと、  別の(同じでもよい)H’上のp’、q’において、

q’=UqU†、 p’=UpU†

となるものが存在する時、ヒルベルト空間H上とH’上の2つの既約表現は、 ユニタリ同値になる。

その系として、H=H’ で、p=q’ とすれば、

p=UqU†=U†p’U q=U†UqU†U=U†(Up’U†)U=p’

したがって、 p=UqU†、 q=UpU†

∴ q表示とp表示の既約表現は、ユニタリ同値である。 //

ということは、運動量表示のψ(p,t)も位置表示のψ(x,t)も、 また、運動量表示のハミルトニアンも位置表示のハミルトニアンも、 ユニタリ同値です。 その変換関係Uは、位置表示のQ∈既約表現、運動量表示のP∈既約表現 とすると

P<p|ψ>=U Q<q|ψ> U† と置くと、

ψ(q,t)|q>=|q><q|ψ>  ψ(p,t)|p.>=|p><p|ψ> より、

ψ(p,t)|p.>=|p><p|ψ>=∫dq|p.><p|q><q|ψ>

=∫dq|p.>ψ(q,t)<p|q>

 ここで、<p|q>=1/√{2π}exp(-i pq) なので(証明略)  ということは、

q表示の波動関数とp表示のものの間のユニタリ変換は、フーリエ変換であり、シュレーディンガ方程式も 既約表現の一部なので、同じくフーリエ変換になります。 そして、

「確率(密度)の保存」も既約表現の一部なので、当然、成立する。

証明終わり。 ではありますが、どんな形になるか求めてみます。

まず、位置表示のシュレーディンガ方程式: ih'∂/∂t ψ(x,t)=H ψ(x,t) から、 p表示のシュレーディンガ方程式を導出します。(フーリエ変換する)

ih'∂/∂t ψ(x,t) は、ih'∂/∂t ψ(p,t) /√{2π}

p=-ih' ∂/∂x という微分は、フーリエ変換すると、pとの積なので、   運動エネルギーの項: -h'2/2m ∂2/∂x2 ψ(x,t) は、p2/2m ψ(p,t) /√{2π}

ポテンシャルの項: V(x) は、 V(x)のフーリエ変換を、1/√{2π} V’(p) と置き、V(x)ψ(x,t)をフーリエ変換すると、 畳み込み積分となり、

∫dx V(x)ψ(x,t)exp(-i px /h')=1/2π ∫dp' V’(p-p')ψ(p',t)

したがって、p表示のシュレーディンガ方程式は i/√{2π} h’∂/∂t ψ(p,t)=p2/2m ψ(p,t)/√{2π}+1/2π ∫dp' V’(p-p')ψ(p',t)

ih’∂/∂t ψ(p,t)=p2/2m ψ(p,t)+1/√{2π} ∫dp' V’(p-p')ψ(p',t)

上記から、運動量表示での「確率の保存の式」を計算してみます。 まず、 ∂/∂t(ψ*(p,t)ψ(p,t) ) は、

{ψ*(p,t)ih’∂/∂tψ(p,t)+ψ(p,t)ih’∂/∂tψ*(p,t)}/ ih’

=1/ih'{ψ*(p,t)ih’∂/∂tψ(p,t) + ψ(p,t)ih’∂/∂tψ*(p,t) }

ih’∂/∂t ψ(p,t)の複素共役は、-ih’∂/∂t ψ*(p,t) なので

=1/ih'{ψ*(p,t)ih’∂/∂tψ(p,t) - ψ(p,t)ih’∂/∂tψ*(p,t) }

=2/ih’√{2π} { ψ*(p,t) ∫dp' V’(p-p')ψ(p',t) - {ψ*(p,t)ih’∂/∂tψ(p,t) }*}

=2/h’√{2π} Im{ ψ*(p,t) ∫dp' V’(p-p')ψ(p',t) }

これは、x表示の確率流密度の式に戻って考えると、「流れの発散」からくる項は恒等的に0で、 「ポテンシャル」からくる項だけが、結果に現れる。 それで、この項を「流れの伝播」と呼ぶことにします(他に言葉が思いつかないので)。 グリーン関数やプロパゲータでいう「伝播」とは関係ありません(俺様用語です)

「流れの伝播」を表す ψ*(p,t) V’(p-p')ψ(p',t) を求めるため、 V(x,t)のフーリエ変換をV’(p-p') として、 G(p, p')=2/√{2π} V’(p-p') と定義します。 すると、

∂/∂t{ψ*(p,t)ψ(p,t) }- 1/h' Im{ ψ*(p,t)∫dp’ G(p, p')ψ(p,t)}=0

∴「p表示の確率密度=運動量密度」の時間変化は、運動量密度の「流れの伝播」の増加・減少に一致する。

//

尚、自由粒子つまり V(x,t)=0 の場合、G(p, p')=0 になるので

「p表示の確率密度=運動量密度」の時間変化は0 = 運動量は保存する

ことが言えます。